りんごのほっぺ



さっきまでの優しい雰囲気が台無しだ。

やり場の無い衝撃に堪えていると、チッカさんが私の方に視線を移した。



「あれ?この子だあれ?」



ドキッ!カアアアアアアア!

急に注目がこちらに注がれて紅潮(こうちょう)した。いつもの事ながら面倒な体質だ。

赤色がバレないように顔を伏せた。



「あー…、こいつは、林檎ちゃんだ」

「林檎ちゃん?へぇ、可愛い名前だね。2年生?」



り、林檎ちゃんですって!?

那智さんが適当を言ったせいでチッカさんは私の名前が林檎だと思い込んでいる。


いや、そもそも那智さんは私の名前を知らないから仕方ないのか。


緊張で何も言葉が出ない私をチッカさんは不思議そうに見つめていた。


めっちゃ見られてる。めっちゃ見られてる。めっちゃ見られてる…!そんな可愛い顔で私を見ないでえええええ!



「チッカ、林檎ちゃんは恥ずかしがり屋さんみたいだからあんまり見ないでやってくれ」

「あれれ、そうだったんだ。ごめんね?林檎ちゃん」



そんな私を哀れにでも思ったのか那智さんがフォローを入れてくれた。

恥ずかしがり屋さん…?まさか那智さんの口からそんな柔らかい言葉が出てくるとは思わなかった。ちょっとびっくり。ていうかびっくりの連続である。
< 14 / 59 >

この作品をシェア

pagetop