りんごのほっぺ
episode 《1》
第1話 迷子の迷子の那智さん
「あの…プリントを、」
──放課後。授業という名の拘束時間が終わってクラスメイト達は浮かれ騒いでいた。
ギャアギャア、ガヤガヤ、ザワザワ。
雑音が切り裂くようにして鼓膜を刺激する。
「数学のプリントを回収したいんですが、」
そんな中、黄緑 緑、もとい、シュレックは。前期に押し付けられて強制的に入ったプリント委員会という小学生じみた委員の仕事を必死で成し遂げようしていた。
ええ、もう、死ぬ程必死だった。
赤面症の私は注目されるという事が大の苦手だ。
いつもならプリントの回収期日が決まっているので事前に黒板のお知らせコーナーの所や、朝の内に黒板に書いておいたりと出来る限りの工夫をしてきた。
だが、今日だけは違った。
数学の大友先生が期日を間違って告知したらしく、さっき、本当に今さっきになって、プリントを回収してほしいと頼んできたのだ。
自分で回収しろよ!と心から言いたい所だが、プリント委員会という意味の分からない委員会があるせいで先生達は何もしてくれない。
シュレックは人生最大とも言えるピンチに陥っていた。
「あのぅ、皆さん、数学のプリントを、」
あまり注目されくない私は大きい声を出せない。けど、大きい声を出さなければプリントは絶対に集まらない。なんて悪循環なのだろう。