りんごのほっぺ



───・・・•那智さんがあんなに駄々をこねてまで注文したかったメニューは、480円の唐揚げ定食だった。

それを今、私の目の前で美味しそう頬張っている。

100円足りなくても380円で食べられるメニューはたくさんあったのというのに、どうしても今日は唐揚げ定食の気分だったらしい。



「いやー、まさか林檎ちゃんが助けてくれるとは思わなかったわ」



ほくほく顔で唐揚げをつつく那智さん。すっごく幸せそう。唐揚げが好きなのだろうか?



「今日はあいつらが補習でいないから俺1人で飯食わないといけなくてさぁ、あ、林檎ちゃんも食うか?唐揚げ。うめえぞ」



いきなり口元に食べかけの唐揚げを持ってこられて驚いた。

ぶんぶんと首を横に振って全力で拒否る。


が。


何故かその拒否は那智さんに伝わらず、ズボッ!と容赦無く口の中に(食べかけの)唐揚げを突っ込まれた。

ま、まじかよ…!



「な?うめえだろこれ」



ガハガハ満足気に笑う那智さん。そんな顔を見せられたら口から吐き出す事も出来なくて、仕方なく(食べかけの)唐揚げを味わった。

……あらやだ。なかなか美味しいじゃないの。
< 21 / 59 >

この作品をシェア

pagetop