りんごのほっぺ
───・・・•那智さんがあんなに駄々をこねてまで注文したかったメニューは、480円の唐揚げ定食だった。
それを今、私の目の前で美味しそう頬張っている。
100円足りなくても380円で食べられるメニューはたくさんあったのというのに、どうしても今日は唐揚げ定食の気分だったらしい。
「いやー、まさか林檎ちゃんが助けてくれるとは思わなかったわ」
ほくほく顔で唐揚げをつつく那智さん。すっごく幸せそう。唐揚げが好きなのだろうか?
「今日はあいつらが補習でいないから俺1人で飯食わないといけなくてさぁ、あ、林檎ちゃんも食うか?唐揚げ。うめえぞ」
いきなり口元に食べかけの唐揚げを持ってこられて驚いた。
ぶんぶんと首を横に振って全力で拒否る。
が。
何故かその拒否は那智さんに伝わらず、ズボッ!と容赦無く口の中に(食べかけの)唐揚げを突っ込まれた。
ま、まじかよ…!
「な?うめえだろこれ」
ガハガハ満足気に笑う那智さん。そんな顔を見せられたら口から吐き出す事も出来なくて、仕方なく(食べかけの)唐揚げを味わった。
……あらやだ。なかなか美味しいじゃないの。