りんごのほっぺ



「林檎ちゃんはもうお昼食べたのか?」

「…ゆ、柚子ネギうどんを食べました」



遠慮がちに、できるだけ顔を合わせず、目も合わせずに、コソリと答えた。

そんな私を不審に思ったのか無理にでも目を合わせようとするヤンキー那智さん。

威圧感はんぱねえ。



「何でこっち見てくんねえんだよ」



拗ねたような口調だった。そんな事言われましても……、か、顔がですね。赤いんですよ、ええ、とっても。



「あー、そういえば林檎ちゃんは恥ずかしがり屋さんだったっけか」



ちょっと違うけれど。もうそれで良い。それで良いからこの話題には触れないで欲しい。…──だって益々顔が赤くなっちゃうんだもの!

あんなに山盛りだった唐揚げ定食も終盤の方に差し掛かっていて野菜をむしゃむしゃ豪快に食べていた。



「何で恥ずかしがり屋さんなんだよ?理由でもあんのか?」



どうしてそんなに私に興味津々なんだ。

これは返事をしないと永遠とこのテーマについて話されそうだった。それは困る。なんとかしないと。



「……理由は、特に、ありません」

「嘘つけ。ぜってえあるだろ」

「え!?っ嘘、じゃない、」

「いんや嘘だね俺には分かる」

「……っ、」

「良かったら俺に話してみろよ」



嘘をつくのは上手い方だと思う。今だって完璧に嘘をついたと思ったのに。

那智さんには簡単に見破られてしまった。

ヤンキーの、癖に……馬鹿な癖に。何なの。
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