りんごのほっぺ
しーはーと爪楊枝で歯に挟まった鶏肉を取っている那智さんは今か今かと私の言葉を待っていた。
話すつもりもなければ、上手く言葉も纏まらない私は一向に黙ったままで。
結局痺れを切らした那智さんが先に口を開く。
「よし、分かった。俺に良い案がある」
”良い案”?
嫌な予感がして反射的に顔が上がる。ガチリ、那智さんと視線が絡み合った。
っあ、目が…──! そんな事ですら私の心臓は暴走し出すというのに。
那智さんは、まるで、手の平の上で弄ぶかのごとく。
鮫のように大きな口をニッタリ、歪ませて
狼のように鋭い目をギラギラ、尖らせて
チュルリ──…、舌舐めずりをしたのだ。
その仕草がなんだか様になっていて、ちょっとセクシーで、更に加速しだす心臓。苦しくて死んじゃいそうだった。
「俺が林檎ちゃんの願いを3つ叶えてしんぜよう!」
腕を組み、鼻を鳴らし、とびっきりのドヤ顔で言い放った。
はあ?何を言ってるの?
いよいよ那智さんの馬鹿に拍車がかかったと思った。