りんごのほっぺ
第5話 俺の林檎ちゃん
目的地に着くなり、那智さんは私を床に投げ捨てた。
ゴロ、ゴロリ、無様に床に転がる。
怒りで震える身体。呆れて声も出ない状況。言葉が上手く纏まらない思考回路。蘇る煤けたうさちゃんパンツの屈辱。
……っああああ!最悪!絶対に呪ってやるんだから!
とりあえず床に転がっていても仕方がないので、のそのそと起き上がり、埃まみれのスカートをはたく。
連れて来られた場所は恐らく旧校舎。那智さんのクラスの3年G組ではなくて、古びた美術準備室だった。
いわゆるアジトってやつなのだろうか。
「林檎ちゃん、準備は良いか?」
いきなり拉致しといて準備も何もあったもんじゃない。最初からノー準備ノー心構えである。防御力ゼロだっつーの!
ぐちぐち心の中で文句を言っていると私の返事を聞かずにアジトのドアを開けやがった。
『ガオーッ!!!』
「ギャアアアア!!」
突然。本当、突然。ドアを開けるなり教室の中から怪物が二体、飛び出てきたのだ。
…っな、なななになに!何事よ!?・・・•──あ。
咄嗟に悲鳴を上げてしまったけれど、冷静になって彼等を見てみると、怪物は下手くそなお面だったし、なんたってうちの制服を着ていた。
それで気付く。これは最悪なジョーク。非常識なサプライズだって事に。本当、馬鹿げている。
この人達は那智さんの碌でもない仲間なんだろう。
ヤ ラ レ タ。