りんごのほっぺ
私の恥ずかしがり屋さんになった悲しい過去を聞いてさっきよりも増して活気とやる気に満ち溢れる那智軍団。
その勢いが恐ろしくも感じれば、逆に頼もしくも感じてしまう私はじわじわと那智軍団に布教され始めているのかもしれない。
これが噂のマインドコントロールってやつなのか…!恐ろしいぜ!
だけれども。
実際、恥ずかしがり屋さんを治すって一体具体的にどうしたらいいんだろう……?
解決策ってあるの?
「でもさー、恥ずかしがり屋さんって何をどうすれば治るのかなぁ?」
同じタイミングで同じ問題点に気付いたチッカさんが首を傾げた。
他の皆も、そうだなー…、とぼんやり考え出す。
「やっぱ手っ取り早く林檎ちゃんに暴言吐いたクソ男をぶっ潰すとか?」
「それただの復讐じゃん」
「復讐する事で心ん中のドロドロが消えるかもしれねえじゃん」
「えー、そんな簡単な事じゃなくない?」
那智さんが出した提案を水渡さんが冷たく避難する。復讐って那智さんらしいな…。
でも水渡さんの言う通りこの問題は復讐をした事でなんとかなるような簡単な事ではない。ていうかあいつの顔なんぞ二度と見たくない。
行き詰まった空気の中、一人、ニコニコとしていたキュウちゃんが口を開いた。
「こうゆうのってさ、要は、”慣れ”でしょ?」
解決策がすでにあると言わんばかりの得意気な顔だった。…あれ?なんか、嫌な予感するぞ。
なんせこの得意顔には良いイメージが無いのだ。もちろん那智さんのせいでね。
キュウちゃんの言葉の意味を理解できたのは水渡さんだけで、後の二人はちんぷんかんぷんのようだった。
「慣れってどいうことだよキュウちゃん」
那智さんが詳しく話すのを勿体ぶるキュウちゃんに対して急かすように問い詰める。
するとキュウちゃんは鼻を人差し指でスリスリ擦りながら、てやんでい!と謎な前置きをして話し出した。
「林檎ちゃんがたっくさん人前に出て免疫をつけりゃあいいのよ!」
物凄い単純だけれど、物凄い的確で、物凄い残酷な提案をしてきたのだ。