りんごのほっぺ



メロディーと同時にテレビ画面に表示された曲名。それを目にして心臓が悲鳴を上げた。



【睡蓮花 〜 湘南乃風 〜】



──ギャ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!


すぐに画面に歌詞が流れ始める。早く歌っちまえと私を攻める。身体の震えが止まらない。思考も追いつかない。──・・・•ぶっ倒れそう。


どうしてよりによってパーティーチューン?
どうしてよりによってレゲェビッチ?


反論も反抗もできないまま曲はどんどん進んでいく。盛り上がりの部分まで後数秒。


前方でおしぼり待機の那智軍団はすでにノリノリ状態。肩を揺らしたり、足でビートを刻んだりと色々だ。


マジ勘弁!こんなの歌えないから!


ぎゅぎゅっと目を瞑って歌う事を放棄した、その時だった。

曲の盛り上がりの部分で那智さんのダミ声がスピーカーから響き渡ったのだ。



『…─はっなっびっらっがっ、流した、なっみっだっ!あっなったはっ、笑えていますか!』



──・・・っ!?ギョッとして目を見開く。忠実に再現してるつもりなんだろうけど下手くそ過ぎてびっくりした。本当ダミ声。マジでリアルジャイアン。


ていうか結局那智さんが歌うんかい!


那智軍団もマイクが無くても楽しそうに歌っていて。熱気に満ちてくる。
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