りんごのほっぺ
「恥ずかしがり屋さんを治すきっかけにはなれたか?」
”きっかけ”。那智さんからそんな言葉が出てくるとは思わなかった。
どうしようもないくらい馬鹿な人だから、カラオケ行っただけで大解決!万々歳!なんて言い出しちゃいそうなのに。
なんだかんだ真剣に考えてくれてるんだ。私の事。ちょっと拍子抜け。
「きっかけ…には、なったと思います」
「ほおほお。それは今後が楽しみだな。俺もランプの魔人に立候補した甲斐があるぜ」
「ランプの魔人まじで最強です」
「お?どうした林檎ちゃん、そんなに褒めちゃって。悪いが褒めてもおんぶじゃスキップはできねえぜ」
「いやスキップは酔うんで逆にしないで下さい」
「──まあ、でも」
くるり。那智さんは不意に私の方に振り返ると、くしゃり、太陽のように笑った。
「林檎ちゃんがもっと褒めてくれれば願いが4つに増えるかもなぁ!」
戯けた口調で那智さんが言った。
そんな無邪気な那智さんをどこか愛おしく感じてしまった私は正真正銘の馬鹿なのかもしれない。
そう。これは那智さんマジック。いや、ドラッグ?うんうん。きっとそうに違いない。
そんな事を考えているせいで頬が少しだけ赤らんでくる。それを見逃さなかった那智さんが、あ!と声を出した。
「何だまたりんごほっぺじゃねえか。やっぱり前途多難だなー」
「…っいや!これは…!」
「これは何だよ?」
ケタケタ笑う那智さんに反論しようとしたけれど、じっと見つめられるもんだから、ついつい視線を逸らしてしまった。ま、負けた…。