りんごのほっぺ



「聞いてんのか、女」



侵入者はその私の急激に変わった顔色に驚く事なく、気にも止めずにしつこく話しかけてくる。



「おい」



一向に返事をしない私に苛立った侵入者が教室の中に入ってきた。

どんどん近づいてきて、どんどん私を襲う圧迫感。

心臓が止まるかと思った。

ころ、される。



「耳、腐ってんのか」



鼻と鼻がくっつく距離まで顔を近付けられた。コワイコワーイお顔が目の前に現れる。ふわりと鼻をくすぐったビターオレンジの香りが更なる恐怖をかき立てた。



あまりの恐怖に血の気が引く。──のに、顔は究極に熱いまま。


青ざめているのか、赤ざめているのか、よく分からない事になっていた。


例えるならそう、右が青で、左が赤で、ハーフアンドハーフみたいな。そんな世にも奇妙な黄緑 緑だった。

へっ、返事をしないと殺される…!



「……なっ、なんでしょ、」

「3年G組まで案内しろ」



声を振り絞って返事をすれば、とんでもなく偉そうに命令をしてきた。
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