りんごのほっぺ



どうして私が案内しないと駄目なんですか、なんて。口が裂けても言えない。

どうしてよりによって私に頼んだんですか、なんて。口が裂けても言えない。

これはもう私に拒否権は………無い。



「何だよその目。文句あんのか」



私は壊れたロボットのように首を横に振った。



「じゃあ早く案内しろ」



そう言って侵入者はそそくさと教室を出て行く。

──シン、と。静まり返った教室。

竦んで動けない足。



ど、どどどど、どうしよう!

本当に行かないとだめなの?なんなの?どいうこと?

てかてかプリントがまだ集まってないし、そもそも放課後なんだから教室に行く意味無いじゃん。



おどおど、ぐずぐすしていると、侵入者が教室の中に顔だけ出して、



「早くしろよ」



般若のような顔で睨んできた。


そんな事急に言われたって怖くて足が動かないんだよ!何なのよ!もう!



「……っあの、まだプリント、が、」

「プリントだってぇ?」



蚊の鳴くような声で訴えれば私の手元に目をやる。



「集めたいのか?」



凄味のある言葉にびびりながらも、コクリ、遠慮がちに頷いた。
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