悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!
『小娘ごときが、近寄るな』

響く声はわけの分からないことを言う。

それから強い風が吹いた。

思わず腕で顔を覆い、強風に耐える。

風に吹かれるなかで鋭い痛みを感じた。

「いっ、たい!」

まるで切られたような鋭さのある痛み。滴り落ちる血の熱を感じる。

「佐奈!」

リドは叫んであたしの顔を両手で包み込むようにして「顔、見せろ」と言った。

おそらく頬を怪我したのだろう、リドは傷口の下をそっと指でなぞると顔を歪めた。

「これは、切り傷か」

傷口はどうやら浅いらしい。毒もない上にすぐに治るから安心しろ、とリドは言った。

「刃物で、切られたのかな…?」

するとリドは首を横に振って否定した。

「違う。これはおそらく…カマイタチ」

「カマイタチ…?」

「風を司るヤツの得意技だ。鋭い風がまるで刃のように襲ってくるおっかないやつだ」

鋭い風が、刃のように。

それって、つまり。


「攻撃は、目に見えないってこと?」

「そういうこと」

リドは軽い調子で答えたが、事態は最悪だ。

あたしたちの逃げ場はこの狭い踊り場。

敵はどこから現れるとも知れないオバケの類いで、攻撃も目に見えない。

そして唯一頼れそうなのは俺様悪魔のリドだけ。



「絶体絶命の大ピンチじゃん!どうすんのこれ!」


「まあ、とりあえず」


リドはうーんと背伸びをして脱力すると崖の上の3階を睨み付けた。


「敵をどうにかするしかないだろ」

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