悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!
「兄さんなら佐奈を家まで迎えに行くと思うんだけど?」

「ああ、それがね」

さっきまでのやりとりを教えると、アキの眉間のしわはなくなった。


「やっと気づいたんだ、兄さん」

「そ、お姉ちゃんもね」

手がかかる兄と姉だ、と2人で溜息を吐きながら星空の下を歩く。

鈍感な兄姉に苦労してきた者同士、その苦労ももうすぐ報われると思うと、幸福な2人の姿が見れると思うと嬉しさもひとしおだ。


「そっか、良かった」


アキは空を見上げた。

その横顔はとても嬉しそうだった。


きっとあの2人は今この星空の下、忘れられない大切な時間を過ごしているのだろう。

世界中の誰よりいちばん幸福な時を共有しているのだろう。


そのために2人の背中を押したのはあたしだ。


『怖がって行動を起こさなかったら、何も変わらない』

そう姉に言ったのもあたしだ。


だけどその言葉が当てはまるのは、姉だけじゃない。朔兄だけじゃない。


あたしだって恐れてるんだ。

アキとのこの関係が壊れてしまうことがとても怖いって思う。

朔兄やお姉ちゃんみたいに、あたしとアキが両想いだという保証はどこにもない。

アキのことだ、あたしに興味がないどころか恋愛それ自体に興味がない可能性だって十分にある。

怖がっていちゃだめだって、行動を起こさなきゃだめだって、分かってる。痛いくらいに、分かっているんだ。

だけど、行動を起こせない。

あれだけお姉ちゃんには言ったのに、朔兄にも言ったのに、自分は行動できない。

あたしは卑怯だ。

下を向いて、拳を握る。


「どうした?」

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