悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!
「佐奈には、笑っててほしいから」


優しい瞳が、苦しげに細められる。

心臓がどくんどくんと高鳴り始める。

どこを見たらいいか分からなくなって、目のやり場に困る。


「幼馴染だから?」


あたしは笑って見せた。

アキの思考回路は、こうだ。

幼馴染を含む身内が大切、だからこそ笑っていてほしい。

これに違いない。


「違わないけど…違う」


けれどこの考えは間違っていたらしい。


「え!?違うの!?どこが!?」


もはや違っているところが分からない。これ以外にあり得ないのに、違わないけど違うって何!?どっち!?


「だから、その…。

俺は、佐奈のことが…」


アキが何かを言おうとしたときだった。

訳が分からなくなって逃げ出そうとしたあたしは後ずさりをしようとしていた。

けれどちょうど校庭に落ちていた石か何かに躓いて転んでしまった。しかもしりもちをついてしまった。

「いったたたた…」


「佐奈、何してんの」


アキは呆れたように溜息を吐いた。


「転んだ?」

「バカなの」

「ひどい!」


ストレートなアキの罵倒は心にきます。


「それで、何か言いかけてた?」

思い出してそう尋ねるけど「もういい」とアキはぶっきらぼうに言った。


「もういい。どうでもいい。どうだっていい。もう忘れていいよ、ていうか忘れて。今すぐ忘れて、3秒で忘れて!ほら!」

「いや、無理だって!『ほら!』じゃないし!」

アキは相当怒っているのか何度も「もういい」と繰り返す。


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