悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!
あたしが呆然とその分厚い辞書みたいな歴史書を両手で抱えていたのに気づいたらしい田辺くんは、あたしに近づくと「貸して」と言った。


「これは僕が調べておくよ。最上さんは他の資料を探して?」


なんて優しいんだ、田辺くん。君は天使か。

まるで神様のような慈悲を施してくれる田辺くんに心から感謝して、あたしはまた本の森に飛び込んだ。


「田辺くん、優しすぎるよ…」

さっきのやりとりを思い返して、あたしはほうっと息をした。

あたしが抱えていた大変に面倒くさそうな資料を引き受けてくれたなんて。

アキなら絶対、そんなことは言わない。絶対に。

アキが言うとすれば、例えばこんな台詞。


『え?嫌だよ、面倒くさい』


「あー、絶対に言うわ」

「そうだな」

「そうだよね、絶対にそう言うよ……って、え?」


ハッと視線をさ迷わせると、すぐに見つかった。


「な!」


「おっと、


図書館では お静かに」



響いたのは、耳に絡みつくような、妖艶な声。



なんであんたが、ここに。

そう言いたかったのに、言えなかった。



「まあ、喋りたくても喋れないだろうけどな」



こいつが__リドが、あたしを喋れなくした。

リドの、魔法で。

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