悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!
「そんなことより!」

あたしは二人の間に割って入る。


「これ、どうするの?」


指さしたのは、本棚と本の残骸。


「ああ」と二人は声をそろえて、そういえばそんなものもあったね、とでも言うように声を出した。

あたしはため息を吐いた。


そのとき、「ん…」という人の声が聞こえた。

またああだこうだと言い出したアキとリドを放っておいて、あたしはその声が聞こえた方へと歩き出した。

そしてすぐに見つけた、その声の人物。


「田辺くん!」


それは力なく横たわる田辺くんだった。


「大丈夫!?」


慌てて駆け寄ると、田辺くんはずれた眼鏡をかけなおしながら「あれ、僕、どうして…」といつもの口調で状況を察そうとしていた。


「僕、どうしてこんなところで倒れていたのかな…」


全然覚えてないや、と眉を下げる。

その様子を見て、やっぱりさっきの田辺くんは別人だと分かった。

誰かが田辺くんに乗り移っていたんだ、きっと。


「ああ、えっとね、さっき…」


状況を説明しようとして、あたしははっと口をつぐんだ。

あたしが読み上げた本の題名によって怪物が現れたこと、そして田辺くんがおそらく誰かに乗っ取られたこと、怪物をアキが倒してくれたこと。

どれも田辺くんに話せば、あたしはただのファンタジーや空想が好きな女の子だと思われかねないし、それにそれを示す証拠はもうどこにもない。

倒れた本棚も、散らばった本も、いつの間にか全部元通りになっていた。

きっとリドかアキが魔法みたいな力でどうにかしたんだろう。

そんなことを思いながら、あたしは状況を誤魔化す言葉を選んでいた。


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