悪魔の封印を解いちゃったので、クールな幼なじみと同居します!

台所に移動してから、あたし達の間に会話はない。

タン、タン、タン。

ただ野菜を切る音だけが響く。


時々、「お米炊いて」だとか、

「味噌汁作って」だとか、

アキからの指令が飛んでくるだけだ。


「あのー、晃さーん?何か手伝うことって…」


アキは何やらおかずを作っているようで、何か手伝うことがあるかと思って聞いてみようと声をかけると、ハイ、と突き付けられた白ネギ。

「晃さん、これは」

「白ネギ。今日の味噌汁の具材。豆腐か油揚げもいれといて」と早口で言うと、最後にこんな言葉を付け加えた。


「無駄口叩いてる暇があるなら味噌汁のネギでも切って」


まじか。


「はあ」

わざとらしく溜息を吐いて、仕方なくネギを切る。

アキの考えが全く読めない。

それにあんなに面倒くさそうに、偉そうに、白ネギを突き付けたり指示を出したりすることないじゃない。

イライラしながらネギを切る。


トン、トン、トン。


響く、包丁の音。

単純作業をしていると心が落ち着くとよく言われるし、実際あたしもそうなのだけど、今回はどうやら例外なようだ。

イライラが収まらない。

もうアキの分のネギだけ極太に切ったやつを入れてやろうか、いやむしろアキの分をよそうときに具を入れないで具のない味噌汁にしてやろうか、なんて子供じみた考えが浮かんでそれを打ち消す。

ばかだ、あたし。


「っ、痛!」


包丁で少し指先を切ってしまった。
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