Love Cocktail
Chambord royal
*****
関西に行くつもりが、何故かまた東京に戻ってきた数日後。
ベッドに横になりながら、お昼にコンビニでもらって来た、フリーペーパーの小冊子を片手に眉をしかめる。
無料のアルバイト誌には、バータイプの求人は少ない。
パブのお姉様の募集に乗ってもなぁ……バーテンダーの修業にならないし。
クオリティ系列は今じゃ経営も危ういって聞いたからパスだし。
だからと言って、オーナーの所に戻るのは全然修業にならないし。
バースタイルの店自体が、そもそも少なくなって来ているのかな?
時代の流れは、大衆的な居酒屋系統なのか……。
まぁ、安い、早い、飲める……ってのはいいんだろうけどねぇ。
でも出てくる度に、お酒の量も味も変わるサワーやカクテルなんて、すごく嘆かわしいと思うんだけど。
世も末だ……。
「俺も、嘆かわしいと思うな」
ビクッとして顔を上げ、慌てて求人雑誌を枕の下に素早く隠す。
その一部始終眺めながらオーナーは腕を組んで、部屋の入口から私を睨んだ。
「お、お帰りなさい」
「ただいま」
不機嫌そうな声……だね。
「……私、口に出してた?」
「俺の所だと、修業にならない辺りからだな」
「だって……ならないじゃない」
「そんな事はない。だいたい、君は俺がなんと言おうと好きにやって来てたじゃないか」
まぁ…そうなんだけど。
「……熱は?」
聞かれて肩を竦める。
「下がりました……」
早苗さんの結婚式から5日。
実はオーナーは何回も話し合おうと、うちまで来ていたらしい。
それから、桐生さん夫妻に超怒られながら協力してもらって、私を空港で見つけたけど捕まえそこねた話を聞いた。
初耳過ぎて、とてもびっくりした。
ちょうど私が空港で早苗さんと話をしていた時、夫妻に送ってもらいながら空港に向かっていたようで……。
早苗さんの挙動不審な『なんでもっと早くに言わなかったの』という言葉は、どうやらオーナーが怒られていたらしい。
とにかく、またこの街に帰って来たけれど、帰って来た途端に私は風邪で倒れた。
倒れたと言うか、立つ気力がなくなった……と言うか。
あの結婚式でのドライアイスの冷気。
それからその後、雪にまみれたままで長時間いたのはまずかったらしい。
結構な高熱に彼を大慌てさせた。
その様子がおかしくておかしくて仕方がなかったけど、さすがにからかったら雷が落ちそうなのでやめておいた。
心配してくれているのは解っているんだし。
そしてその彼は黙ってコートを脱ぎデスクの椅子に掛ける。
それから、スーツのジャケットをクローゼットにかけた。
関西に行くつもりが、何故かまた東京に戻ってきた数日後。
ベッドに横になりながら、お昼にコンビニでもらって来た、フリーペーパーの小冊子を片手に眉をしかめる。
無料のアルバイト誌には、バータイプの求人は少ない。
パブのお姉様の募集に乗ってもなぁ……バーテンダーの修業にならないし。
クオリティ系列は今じゃ経営も危ういって聞いたからパスだし。
だからと言って、オーナーの所に戻るのは全然修業にならないし。
バースタイルの店自体が、そもそも少なくなって来ているのかな?
時代の流れは、大衆的な居酒屋系統なのか……。
まぁ、安い、早い、飲める……ってのはいいんだろうけどねぇ。
でも出てくる度に、お酒の量も味も変わるサワーやカクテルなんて、すごく嘆かわしいと思うんだけど。
世も末だ……。
「俺も、嘆かわしいと思うな」
ビクッとして顔を上げ、慌てて求人雑誌を枕の下に素早く隠す。
その一部始終眺めながらオーナーは腕を組んで、部屋の入口から私を睨んだ。
「お、お帰りなさい」
「ただいま」
不機嫌そうな声……だね。
「……私、口に出してた?」
「俺の所だと、修業にならない辺りからだな」
「だって……ならないじゃない」
「そんな事はない。だいたい、君は俺がなんと言おうと好きにやって来てたじゃないか」
まぁ…そうなんだけど。
「……熱は?」
聞かれて肩を竦める。
「下がりました……」
早苗さんの結婚式から5日。
実はオーナーは何回も話し合おうと、うちまで来ていたらしい。
それから、桐生さん夫妻に超怒られながら協力してもらって、私を空港で見つけたけど捕まえそこねた話を聞いた。
初耳過ぎて、とてもびっくりした。
ちょうど私が空港で早苗さんと話をしていた時、夫妻に送ってもらいながら空港に向かっていたようで……。
早苗さんの挙動不審な『なんでもっと早くに言わなかったの』という言葉は、どうやらオーナーが怒られていたらしい。
とにかく、またこの街に帰って来たけれど、帰って来た途端に私は風邪で倒れた。
倒れたと言うか、立つ気力がなくなった……と言うか。
あの結婚式でのドライアイスの冷気。
それからその後、雪にまみれたままで長時間いたのはまずかったらしい。
結構な高熱に彼を大慌てさせた。
その様子がおかしくておかしくて仕方がなかったけど、さすがにからかったら雷が落ちそうなのでやめておいた。
心配してくれているのは解っているんだし。
そしてその彼は黙ってコートを脱ぎデスクの椅子に掛ける。
それから、スーツのジャケットをクローゼットにかけた。