Love Cocktail

Chambord royal

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関西に行くつもりが、何故かまた東京に戻ってきた数日後。

ベッドに横になりながら、お昼にコンビニでもらって来た、フリーペーパーの小冊子を片手に眉をしかめる。

無料のアルバイト誌には、バータイプの求人は少ない。

パブのお姉様の募集に乗ってもなぁ……バーテンダーの修業にならないし。

クオリティ系列は今じゃ経営も危ういって聞いたからパスだし。
だからと言って、オーナーの所に戻るのは全然修業にならないし。

バースタイルの店自体が、そもそも少なくなって来ているのかな?

時代の流れは、大衆的な居酒屋系統なのか……。

まぁ、安い、早い、飲める……ってのはいいんだろうけどねぇ。
でも出てくる度に、お酒の量も味も変わるサワーやカクテルなんて、すごく嘆かわしいと思うんだけど。

世も末だ……。

「俺も、嘆かわしいと思うな」

ビクッとして顔を上げ、慌てて求人雑誌を枕の下に素早く隠す。

その一部始終眺めながらオーナーは腕を組んで、部屋の入口から私を睨んだ。

「お、お帰りなさい」

「ただいま」

不機嫌そうな声……だね。

「……私、口に出してた?」

「俺の所だと、修業にならない辺りからだな」

「だって……ならないじゃない」

「そんな事はない。だいたい、君は俺がなんと言おうと好きにやって来てたじゃないか」

まぁ…そうなんだけど。

「……熱は?」

聞かれて肩を竦める。

「下がりました……」

早苗さんの結婚式から5日。

実はオーナーは何回も話し合おうと、うちまで来ていたらしい。

それから、桐生さん夫妻に超怒られながら協力してもらって、私を空港で見つけたけど捕まえそこねた話を聞いた。

初耳過ぎて、とてもびっくりした。

ちょうど私が空港で早苗さんと話をしていた時、夫妻に送ってもらいながら空港に向かっていたようで……。

早苗さんの挙動不審な『なんでもっと早くに言わなかったの』という言葉は、どうやらオーナーが怒られていたらしい。

とにかく、またこの街に帰って来たけれど、帰って来た途端に私は風邪で倒れた。

倒れたと言うか、立つ気力がなくなった……と言うか。

あの結婚式でのドライアイスの冷気。

それからその後、雪にまみれたままで長時間いたのはまずかったらしい。

結構な高熱に彼を大慌てさせた。

その様子がおかしくておかしくて仕方がなかったけど、さすがにからかったら雷が落ちそうなのでやめておいた。

心配してくれているのは解っているんだし。

そしてその彼は黙ってコートを脱ぎデスクの椅子に掛ける。

それから、スーツのジャケットをクローゼットにかけた。
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