Love Cocktail
「……うん。ま、そうだろうね」

何がでしょう?

「俺は、こう言うのは苦手でしょうがないなぁ」

オーナーは横を向いて、小さく溜め息をついた。視線が逸れてホッとする。

「ホント君を尊敬する」

いや。いきなり尊敬されても、根本的に意味が解らないと嬉しくないし。

「あー……だから」

オーナーは咳払いして、また私を覗き込む。

「……俺の隣で、それを一緒にやらないか?」

……えー…と?

言われたお言葉の意味を色々と考えて、冷戦に判断すると、黙ってオーナーを見上げた。

すると彼は困った様に視線をさまよわせ……それからまた私を見る。

心底、困り果てた顔をして。

「やっぱり、これじゃ駄目?」

駄目に決まってます。

「要点が抜けてるかなぁ?」

「解った。じゃ、跪づいた方がいいのかな……」

その呟きにぶつからない様に起き上がり、同じく身を起こしたオーナーに向き直る。

「オーナー。それは外国映画の見すぎだと思う。もしくはドラマの見過ぎ」

「あ、そうなるか?」

貴方28でしょう? もう29? 何故、そこでもじもじしてるの。

彼は黙って立ち上がり、クローゼットに向かうとジャケットの胸ポケットを探って何かを出して戻って来た。

「はい」

青い小さな箱を右手に乗せてくる。

うん。宝石屋さん等で見るベルベットの小箱は、乙女の憧れかも知れないね。

ただね……。

「……指輪だから」

その台詞はなんなの!?

なんだか、好きな子をいじめちゃう心理がなんとなく解る気分になってきたかもなぁ。

「じゃ、右手につけても文句はない?」

「いや。それは駄目」

キリッとした顔で言われてあきれ果てた。

「……何故そこはキッパリ言えるの」

「そこは普通に言える」

オーナーは真面目顔で頷いて、腕を組んだ。

「あれだよ」

「どれ?」

「俺は、ずっと君とつき合ってる気分だったんだよ」

眉を上げると、オーナーは困惑した顔をしてから俯く。
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