Love Cocktail
「なんですか」

「別に?」

そしてどこか妙に感じるほど和やかなムードの中、穏やかな食事会になった。






食事が済むと、お互い手を振りつつそれぞれの車に乗り込む。

レストランに紳士・桐生さんがいるって事にちょっと緊張したけど、思ったより堅苦しい人じゃなかった。
マナーとかよく解んないしホッともする。

「桐生さんていい人ですよねぇ」

何気なく言うと、オーナーは車のエンジンをかけながら、軽く首を振った。

「隆幸は駄目だよ」

「どこがですかぁ?」

キョトンとすると、オーナーは神妙な面持ちで再度首を振った。

「隆幸は秋元さんにベタ惚れだから、絶対に無理だ」

アクセルを踏みながらの発言に、なんの事か混乱しながら、慌ててシートベルトを着ける。

まったく訳が解らない。
何がどう桐生さんがダメで、無理だというんだろう?

桐生さんが早苗さんにベタ惚れって言うのは、会った当初から見たままだろうし?

そんな事は、とっくのとうに……。

思いつく限りを考えて、思い当たった答えに吹き出した。

「なんで急に笑う」

憮然と言われて、お腹を抱える。

「だって! オーナー……スゴイ勘違いしてる!」

「勘違い?」

「私は桐生さんのこと、別に好きじゃありませんよぉ!」

笑いながら手を振る。なんて勘違い!

「違うのか」

明らかに気抜けした返事に頷く。

「どこからそんな発想が生まれてきたんですか! 全然違いますよぉ!」

「あー……。だけど、秋元さんは君の言ったとおりの美人だし」

「そうですね!」

元気よく言って深呼吸をする。
そこから自分だと、発想する事はないらしい。

「全然違いますから安心して下さい! 今更、あんな熱々カップルに太刀打ちしようなんて思いつきもしないですから!」

「ま、そうだろうが……」

オーナーは言葉を濁して、それから首を傾げた。

「だとすると、誰なんだ?」
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