Love Cocktail
Orange blossom
*****
足が痛い。
だけど、今日はホテルラウンジのバーなので、バーテンダーは座ってなんていられない。
ゆったりとしたBGMの中、イライラだけが最高潮に達して行く。
さすが私も、まさかカウンターのお客様目の前にしてストレス発散なんて披露できないし。
とにかく後三十分程度の我慢だ。
だいたい、あの新しいミュールがいけない。可愛いのは確かなんだけど。
8センチのヒールが全体重を前方に押しやり、なおさら酷い靴擦れに……。
そしてホテル用として履いている、仕事場専用のパンプスがそれに拍車をかける。
「すみません。フロリダをお願いします」
かけられた声に顔を上げ、それから目の前の人に目を見開いた。
「早苗さん?」
微かに微笑んでいる彼女が、カウンターに座っている。
「お食事会ぶりですね」
小首を傾げた姿はやっぱり大人の魅力たっぷり。
おろされた髪が、サラサラと肩に流れて……素直な髪が羨ましい。
「お久しぶりです。今日はお一人なんですかぁ?」
注文らフロリダ。ジュース類を揃えながら微笑み返した。
「隆幸さんが、一条さんに用があるとかで……」
「え? 今日はオーナー……みえてませんよぉ?」
だいたい来る曜日が決まっているし、今日はその曜日じゃないもん。
「二十二時にって約束しているみたいです。隆幸さんはこれから」
二十二時までは後三十分。約束しているんなら来るんだろう。
納得して、ノンアルコールのカクテルを作った。
「どうぞぉ!」
「どうも」
お互い頭を下げあって、またお互いに微笑み合い……。
「今日は赤いルージュなんですね?」
言われて、眉を上げる。
「顔が出る日ですからぁ」
幼さMAXの化粧だと、たまに変なお客様に絡まれる。
そんなお客様は、男の子の従業員が丁重に追い返すけど。何もないに越したことはないからね。
「こないだのメイクも可愛らしかったですけど、もっと可愛らしくなりませんか?」
「え?」
「隆幸さんの知り合いにキュウちゃんさんて人がいて、メイクとか、髪形とかなんとかしてくれるの」
早苗さんはバックから、一枚の名刺を出してくれる。
『Pure Color』と言うロゴと、簡素な住所と電話番号だけの名刺。
足が痛い。
だけど、今日はホテルラウンジのバーなので、バーテンダーは座ってなんていられない。
ゆったりとしたBGMの中、イライラだけが最高潮に達して行く。
さすが私も、まさかカウンターのお客様目の前にしてストレス発散なんて披露できないし。
とにかく後三十分程度の我慢だ。
だいたい、あの新しいミュールがいけない。可愛いのは確かなんだけど。
8センチのヒールが全体重を前方に押しやり、なおさら酷い靴擦れに……。
そしてホテル用として履いている、仕事場専用のパンプスがそれに拍車をかける。
「すみません。フロリダをお願いします」
かけられた声に顔を上げ、それから目の前の人に目を見開いた。
「早苗さん?」
微かに微笑んでいる彼女が、カウンターに座っている。
「お食事会ぶりですね」
小首を傾げた姿はやっぱり大人の魅力たっぷり。
おろされた髪が、サラサラと肩に流れて……素直な髪が羨ましい。
「お久しぶりです。今日はお一人なんですかぁ?」
注文らフロリダ。ジュース類を揃えながら微笑み返した。
「隆幸さんが、一条さんに用があるとかで……」
「え? 今日はオーナー……みえてませんよぉ?」
だいたい来る曜日が決まっているし、今日はその曜日じゃないもん。
「二十二時にって約束しているみたいです。隆幸さんはこれから」
二十二時までは後三十分。約束しているんなら来るんだろう。
納得して、ノンアルコールのカクテルを作った。
「どうぞぉ!」
「どうも」
お互い頭を下げあって、またお互いに微笑み合い……。
「今日は赤いルージュなんですね?」
言われて、眉を上げる。
「顔が出る日ですからぁ」
幼さMAXの化粧だと、たまに変なお客様に絡まれる。
そんなお客様は、男の子の従業員が丁重に追い返すけど。何もないに越したことはないからね。
「こないだのメイクも可愛らしかったですけど、もっと可愛らしくなりませんか?」
「え?」
「隆幸さんの知り合いにキュウちゃんさんて人がいて、メイクとか、髪形とかなんとかしてくれるの」
早苗さんはバックから、一枚の名刺を出してくれる。
『Pure Color』と言うロゴと、簡素な住所と電話番号だけの名刺。