Love Cocktail
思った瞬間に、また抱き上げられた。

「ひゃ……!」

「いいから、バックとジャケット落とすなよ?」

言われてジャケットをつかむ。

あ、もしかしてスカートの私に気を使ってくれたんだろうか?

でもスカート短いし、この抱き方だと横から下着が丸見え?

いやだ。そんな、下着が丸見えなんて絶対に嫌だ!

だって下着。二十二にもなってパンツ丸見えはかなり避けたい!
下着丸見えだけは、女としてイヤすぎる!

「なんでもいいが。見えないから、下着を繰り返さないでくれ」

ハッとなって顔を上げる。

見えたのは綺麗だけどオーナーの困り顔。

「今……口に出して……」

「その癖は早急に直せ」

言われて真っ赤になった。

確かにこの独り言はけっこうストレス解消になるけど……こんな時にまで出てくるのは、かなり恥ずかしい。

もう、自然に出てくるところが、かなり問題。

もしこれが、オーナーについて考えてる時なんかだったら……。

ごく自然に、告白することになってしまうんじゃ?

それはマズイでしょう。

悶々と考えていたら、オーナーの車に乗せられて、気がつけば夜間病院についていた。

ガラガラの待ち合い室。アルコール消毒と、何か他の薬が入り混じったような独特の臭い。

無機質な壁には時期外れのインフルエンザ予防週間のポスターと、ガンの定期検診を推奨する貼紙。

「保険証……なんて、持ってないよね?」

待ち合い室の古臭い長椅子に私を座らせて、オーナーは首を傾げた。

さっきから、当然の様に運んでくれている。

「いつも持っています」

バックの中から財布を出して、カード型の保険証を取り出した。

カード型の保険証は、持ち運びやすくてちょうどいい。身分証がわりにはなりにくいけど、免許もないから、まぁまぁ助かったりするんだな。

オーナーはそれを持って受け付けの方へ向かい、手続きをしてくれる。
それから、そんなに待つこともなくすんなりと診察を受けられた。

足を包帯でグルグル巻きにされて治療をされた後、処方箋を貰って病院を出る。

その間、ずっとオーナーに抱っこされ続けた。

指定の調剤薬局で抗生物質や痛み止めを貰い、また抱っこされながら車に戻って助手席に座らされる。

「もう、あのミュールは履くんじゃないぞ」

きっぱり言われて首を竦めた。

この怪我だとブーツは論外。スニーカーは格好に合わないし、結局、足を締め付ける。

もしかしたら履く靴がないじゃ?
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