Love Cocktail
Black velvet
*****
「吉岡さんって、この頃オーナーと帰ってるんですね」
カマクラの厨房でシェーカーを振りながら、奇策に話し掛けて来たバイト君を振り向く。
週末の夜はかなり忙しい。
だから、週末だけはバイトのバーテンダーも増える。
そしてこの人は、確かいつも平日に交代してくれるバイト君。
名前が……ちらっと名札を見て確認すると赤城君。
「怪我してしまいましてー。車で送って頂いているんですぅ」
出来上がったカクテルをグラスに注いで、綺麗にカットされたオレンジを添える。
それを伝票と一緒に待機してる従業員の方に向けて置いた。
次の注文は……と、伝票を手に取りかけ……。
「オーナーとつき合ってるって噂になってるよ」
思わず、伝票の束を取り落としそうになった。
「な、なにを根拠に!」
赤城君は伝票の位置を直し、一枚取り上げてからリキュールをシェーカーに注ぎ始める。
「……吉岡さんはオーナーと仲がいいし、履いてるサンダルはオーナーが好きなブランドでしょう? いろんな憶測が飛んでいるねー」
そう言われて足元のサンダルを見る。
これってブランドだったのか。
「仲が……いいですかねぇ?」
今度は気をつけて伝票を取りながら、ウォッカの瓶を手に持った。
「オーナーにあれだけなんでも言えるのって、吉岡さんくらいじゃない?」
ううん。私の場合はオーナーに限らず、誰に対してもけっこう言いたい放題なんだけど。
ただ、厨房のメンバーとあまり話す事がないから……気づかれてないのかもしれない。
だって、振り返ると目を逸らされるんだもん。唯一、普通に接してくれるのは赤城君、君だけって話だし。
でも……グラスにリキュールを注ぎながら、ニヤっとした。
「そんな噂になってるんですねぇ」
「うん。違うの?」
違うかどうかって聞かれれば……。
「違いますよぉ!」
……としか言えないのが虚しいけどね。
「へぇ。そうなんだね」
「はい!」
お互い出来たグラスを同時に置いて、目が合うとクスッと笑い合った。
「吉岡さんは、カクテル作るの慣れてるよね」
感心するように赤城君に言われて、次の伝票を取りつつ軽く頷いて見せる。
「実家が、そもそもバーなので」
「吉岡さんって、この頃オーナーと帰ってるんですね」
カマクラの厨房でシェーカーを振りながら、奇策に話し掛けて来たバイト君を振り向く。
週末の夜はかなり忙しい。
だから、週末だけはバイトのバーテンダーも増える。
そしてこの人は、確かいつも平日に交代してくれるバイト君。
名前が……ちらっと名札を見て確認すると赤城君。
「怪我してしまいましてー。車で送って頂いているんですぅ」
出来上がったカクテルをグラスに注いで、綺麗にカットされたオレンジを添える。
それを伝票と一緒に待機してる従業員の方に向けて置いた。
次の注文は……と、伝票を手に取りかけ……。
「オーナーとつき合ってるって噂になってるよ」
思わず、伝票の束を取り落としそうになった。
「な、なにを根拠に!」
赤城君は伝票の位置を直し、一枚取り上げてからリキュールをシェーカーに注ぎ始める。
「……吉岡さんはオーナーと仲がいいし、履いてるサンダルはオーナーが好きなブランドでしょう? いろんな憶測が飛んでいるねー」
そう言われて足元のサンダルを見る。
これってブランドだったのか。
「仲が……いいですかねぇ?」
今度は気をつけて伝票を取りながら、ウォッカの瓶を手に持った。
「オーナーにあれだけなんでも言えるのって、吉岡さんくらいじゃない?」
ううん。私の場合はオーナーに限らず、誰に対してもけっこう言いたい放題なんだけど。
ただ、厨房のメンバーとあまり話す事がないから……気づかれてないのかもしれない。
だって、振り返ると目を逸らされるんだもん。唯一、普通に接してくれるのは赤城君、君だけって話だし。
でも……グラスにリキュールを注ぎながら、ニヤっとした。
「そんな噂になってるんですねぇ」
「うん。違うの?」
違うかどうかって聞かれれば……。
「違いますよぉ!」
……としか言えないのが虚しいけどね。
「へぇ。そうなんだね」
「はい!」
お互い出来たグラスを同時に置いて、目が合うとクスッと笑い合った。
「吉岡さんは、カクテル作るの慣れてるよね」
感心するように赤城君に言われて、次の伝票を取りつつ軽く頷いて見せる。
「実家が、そもそもバーなので」