Love Cocktail
呆れるやら、悲しいやら。

もどかしいって言うのはきっとこんな感じなんだろう。

沈黙の中車は走りだし、マンションの近くに来た頃オーナーは口を開いた。

「……あんまり、変な男だったら嫌だな」

変な男? いきなりなんでしょうか?

「君が好きな男の事。いい加減、教えてくれてもいいだろう?」

教えてくれてもいいだろう……って。

そんなことスッキリと聞かれて教えられる訳がないですから!

「いいじゃないですかぁ、誰だって!」

膝の上で握りしめた拳を見ながら、出来るだけ明るい口調で言う。

「男にも、いろんな種類の男がいるからね。俺が品定めしてあげるよ」

一瞬。何を言われてるのか、全然わからなかった。

「品定め……ですか?」

「君は俺にとって、大切な“花売り娘”だからね。変な虫は嫌じゃないか」

静かに言われて、キュウッと息が苦しくなった。

オーナーの中では私なんか“妹分”扱いなんだと、改めて実感出来てしまうような言葉。

自分がその対象になっているとはまるで考えていない、まるで的外れな発言……。

やっぱり駄目なのかな、と考えさせられる。


……ううん。まだハッキリ断られた訳じゃない。


まだ、オーナーは私の気持ちを知らないんだし。言われるのも無理はないじゃない?

ただ、チクンと胸は痛い。


「吉岡。君は明日、オフだったよね?」

唐突に言われて我に返った。

「そうですけど、それが何か?」

「隆幸経由で、秋元さんから連絡があってね」

「早苗さんからですか?」

「うん。明日、暇なら買い物に付き合ってくれないか……との事だった」

早苗さんが私と買い物?

「一応コレ。隆幸の連絡先。十時以降なら起きてるからって言ってた」
……と言って、メモを懐から取り出す。
「ええ!? 早苗さんに連絡とるのに桐生氏に電話するんですか?」

オーナーは少しだけ苦笑して、メモを私の手にねじ込んだ。

「あそこのふたり。週末は半同棲みたいなものらしいね。だいたい、隆幸が俺に秋元さんの連絡先なんか教えやしないよ」

そう言われて、黙ってメモを眺める。

以前に桐生氏は察しがいい。そう、早苗さんは言っていた。

桐生氏は、オーナーの気持ちをちゃんと知っているのかも知れない。

そんな桐生氏にオーナーも気づいていて……。

従兄弟同士で……って言うのは、なかなか複雑なものがあるかも。
< 31 / 112 >

この作品をシェア

pagetop