Love Cocktail
第二章

Fantastic leman

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翌日、朝10時を狙って、桐生氏のスマホに電話をする。

『……もしもし』

とてつもなく低い声に、一瞬だけ躊躇したけど……でも、このまま切ったらただのイタ電だ。

「あ。桐生様ですか? 吉岡ですけど!」

電話の向こうで、ちょっと笑う気配がする。

『ごめんね。昨日飲み過ぎて、声が低いから恐かったでしょ?』

この人は察しが良すぎやしませんか? 思わず遠い目をしちゃいそうなんですけど。

『それに“様”はいらないからね』

「え……いや。その」

桐生氏は桐生氏ですし。

いきなりオーナーみたいに隆幸とは呼べるはずもなく……。

私がそんな風に呼ぶはずがないんだけど、呼んだとしたらとてもおかしなことになる。

『今はプライベートで、僕は君の店のお客じゃないんだし。あ……叩かれたから、電話替わるね』

早苗さん。もしかして桐生氏を叩きましたか……。

『もしもし。吉岡さん?』

少しの間の後、早苗さんの落ち着いた綺麗な声が聞こえてきた。

「あ、はい! 吉岡です」

『ごめんね。最近の隆幸さんは、外と中とを区別したがりやなんです』

いきなり何の話ですか?

「外と中?」

『仕事中とプライベート』

「ああ! 解る気がしますね!」

とても納得。

お店で見る桐生氏は、お客様然……って感じだけど、お食事会の時はちょっとフランクな感じだった。

オンとオフ切り替え派ってことですね!

『それで……今日はお暇ですか?』

「はい! 暇です!」

力強く言うことではないんでしょうが!

『では一緒にお買い物をしましょう。可愛い服屋さん見つけたから、吉岡さんにどうかと思っていて……』

うーん。可愛い服屋さんですか。

でも今月オーナーのせいで結構散財しちゃっているんですよねー。

「高いお店は無理ですぅ」

『隆幸さんや一条さんじゃないんですから。それなりの値段で折り合いをつけましょうよ』

その言葉に思わず吹きだしてしまった。

早苗さんの声は呆れるというか諦めてるというか、そんな感じに響いてきたから余計に可笑しい。
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