Love Cocktail
「え……でも、よくお店でキスしてますよ?」

たまにグラス下げに行くと、何度かキスしてる二人を見たことがある。

「桐生さんキス魔なんだよぅ。知らなかった?」

「キス魔?」

あのちゃんと紳士な桐生氏が?

「うん。つき合う前からけっこう強引に、熱烈なのを……」

「佳奈!」

今度は、早苗さんがテーブルを叩き、私たちは黙り込んだ。

「ね? 反応がそっくりでしょお?」

確かにそっくりな反応している早苗さんに……笑うしかないですね。

だけど早苗さんは気を取り直したように咳ばらいし、それから首を振るとお茶を飲み干した。

「これからは、私の買い物に付き合ってもらいますからね」

いきなり話題を変えられて頷いた。

でも、私ならこんなに可愛い反応見せませんよ。

とりあえず、無難なプレゼントの話題でご飯を食べ終わり、歩いてすぐの老舗デパートにやってきた。

「ライターとネクタイ以外で、捜さないといけないのよね……」

早苗さんは呟いて、一緒になって途方にくれた。

目の前にはたくさんの紳士用品たち。

佳奈さんは最初から部外者顔だし……。

男の人にプレゼントってけっこう難しいんだな。誰かに相談できれば話は早そうなんだけど。

「うちの兄貴だとスノボのジャケットとかウィンター用品で喜びますけど」

「……お兄様がいらっしゃるの?」

「お兄様って柄じゃないですけど、いますねぇ」

歌って踊れるバーテンダーとしては、ある意味有名。

あれはプレゼントの相談相手としては宛にならないなぁ。

誰か他に見本になりそうな男性……考えた末にオーナーに行きついた。

彼はどことなく桐生さんに似ている。
まぁ、従兄弟だから当たり前なんだけど。

リスペクトしているのかは判断できないけれど、スーツの着こなし方を見る限り、好み等も似ているんじゃないだろうか?

だとすると、相談相手にはうってつけかもしれないな。

いきなりスマホを取り出して連絡を取り始めると、目の前の早苗さんは瞬きした。

たぶんこの時間なら、起きているはず。

『もしもし?』

ちょっと不機嫌そうなオーナーの声が聞こえてきて眉を上げる。

これは……もしかして寝起きでしょうか?

「おはようございます!」

『別に起きてたから。なんの用なんだ?』

なら、あんなに不機嫌そうにでなくても……。

でも、細かい説明は抜きにして要件だけ聞いちゃおう。

「はい! 男性が欲しいものってなんでしょうか?」

『……女の子?』

あのねえ?
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