Love Cocktail
「オーナーに聞いた私が馬鹿でした。さようならぁ~」

『ああ、まてまて。冗談だから』

「本当ですかぁ?」

めちゃめちゃ本当っぽかったんですが。

『あれだろう? どうせ誰だかさんの誕生日プレゼントだろう?』

溜め息混じりの声に少し躊躇する。

これは完璧にバレてましたね。

『秋元さんの買い物なんてのは、なんとなく予想つくからな』

「はい。何がいいでしょうかとぉ」

『それで、どうしてよりによって、俺に聞くのか……』

「好みが似てるでしょう」

と~っても似ているでしょう?

女性の好みだって一緒という事じゃないか。

でも、そう言うと、オーナーは少し沈黙した。

『……ライターは?』

「駄目だそうです」

『ネクタイ』

「却下ですぅ」

『新しいゲームソフト?』

なんでゲームソフト。

「子供のクリスマスプレゼントじゃないんですからぁ」

『後はあれだ、奴の事だから酒かカフス』

「カフス?」

『カフリンクス。この間お気に入りのを失くしたって言ってたから』

「……それって、なんのリンクスですか?」

通話の向こうで、吹きだしたような音が聞こえる。

いや、だって、カフリンクスとか、なんだそれって感じでしょう? そんな当然のように言われても困っちゃうんだけど。

『シャツの袖口のボタン。カフスボタンって言った方がわかり易かったかな? 紳士用品ある所で聞いてみるといいよ。大きな所だと絶対にあるから』

「へぇ~」

『ちなみに俺はタイピンが欲しいな』

「あ、はい。解りました」

オーナーはネクタイピンと言う事か。

『あのな。冗談だ』

「え? そうなんですかぁ」

『いや、欲しいけど、秋元さんに言うことじゃないだろう?』

まぁ、そうなりますよね。

「いいですよ。今の御礼ってことで私が買いますから」

『は? いや、いいって。君は自分に磨きをかけなさい』
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