Love Cocktail
カタン……と小さな音がしてスツールから下りる。
戻ってきた中根さんが、その後ろ姿を見つけて首を傾げた。
「今のって。一条オーナーだよね?」
「はい」
「どうかしたの?」
「それがわからなくて。とにかく、お疲れ様ですぅ!」
急いでカウンターから厨房に抜け、タイムカードを切ってから、従業員のロッカーに走った。
今日のオーナーは妙。
いつもと比べて全然違うという訳じゃなかったけど……。
いつもなら他の従業員が目の前に来て、話し掛けないことはないし。
それに、格好つけてないオーナーはおかしい。
いつも気障っぽく構えていて、妙に自分を飾り立てる所あって……何か、それすら億劫だって感じがして奇妙。
着替えてから、従業員通用口を抜ける。
顔を上げると、目の前のガードレールに、寄り掛かるように座ったオーナーの姿が見えた。
「お待たせしました!」
ニヤッと笑われて、目を丸くする。
これはいつものオーナー?
スッと立ち上がると私の姿を下から上へと視線で辿り、それから今度は満足そうに笑う。
「冬服も可愛くなってきたじゃないか」
いつもの感じに、なんか気が抜けちゃいそうです。
「今日はビールと焼酎と日本酒とワイン、どれで行こうか?」
「もう、なんでもいいですよぉ」
「じゃ、鍋にするか」
そう言って私の背中に手をまわし、そっと押してくる。
……いつも以上のオーナーかもしれない。私を相手にこのようにエスコートするなんて……。
混乱しているうちに、お鍋の専門店に着いていた。
***
「駄目ですよぉ! 三ツ葉は最後に入れるものなんですから!」
白菜、お豆腐、椎茸、魚介類、鳥肉、などなど、綺麗に並べて入れてたのに!
オーナーは適当に入れようとして困惑した顔をする。
「胃に入れば、どれも同じだろうが」
「オーナーは食べ物に関する美意識が足りません!! そんなんじゃダメダメですよ!」
「君は食物に関しては、美意識が高すぎる」
愚痴を言いながらお箸を引いてくれた。
「関して“は”って、何かいやぁな言い方ですね!」
戻ってきた中根さんが、その後ろ姿を見つけて首を傾げた。
「今のって。一条オーナーだよね?」
「はい」
「どうかしたの?」
「それがわからなくて。とにかく、お疲れ様ですぅ!」
急いでカウンターから厨房に抜け、タイムカードを切ってから、従業員のロッカーに走った。
今日のオーナーは妙。
いつもと比べて全然違うという訳じゃなかったけど……。
いつもなら他の従業員が目の前に来て、話し掛けないことはないし。
それに、格好つけてないオーナーはおかしい。
いつも気障っぽく構えていて、妙に自分を飾り立てる所あって……何か、それすら億劫だって感じがして奇妙。
着替えてから、従業員通用口を抜ける。
顔を上げると、目の前のガードレールに、寄り掛かるように座ったオーナーの姿が見えた。
「お待たせしました!」
ニヤッと笑われて、目を丸くする。
これはいつものオーナー?
スッと立ち上がると私の姿を下から上へと視線で辿り、それから今度は満足そうに笑う。
「冬服も可愛くなってきたじゃないか」
いつもの感じに、なんか気が抜けちゃいそうです。
「今日はビールと焼酎と日本酒とワイン、どれで行こうか?」
「もう、なんでもいいですよぉ」
「じゃ、鍋にするか」
そう言って私の背中に手をまわし、そっと押してくる。
……いつも以上のオーナーかもしれない。私を相手にこのようにエスコートするなんて……。
混乱しているうちに、お鍋の専門店に着いていた。
***
「駄目ですよぉ! 三ツ葉は最後に入れるものなんですから!」
白菜、お豆腐、椎茸、魚介類、鳥肉、などなど、綺麗に並べて入れてたのに!
オーナーは適当に入れようとして困惑した顔をする。
「胃に入れば、どれも同じだろうが」
「オーナーは食べ物に関する美意識が足りません!! そんなんじゃダメダメですよ!」
「君は食物に関しては、美意識が高すぎる」
愚痴を言いながらお箸を引いてくれた。
「関して“は”って、何かいやぁな言い方ですね!」