Love Cocktail
「リキュールがないと気分が乗りません」

「ああ、そうか……」

オーナーは、ゆっくり納得してくれた。

「じゃ、今度でいいからやって見せて」

気を取り直したように、ワクワクした子供みたいな笑顔に眉を上げて見せる。

「ホテルみたいな渋めのラウンジバーで、あれは難しいです」

「許可するからさ。クリスマスとか……」

「あ~。イベントとしてはいいかも知れませんね」

恋人たちのムードをぶち壊すような、そんな気がしないでもないですが。

……それも、また一興?

やだな―。私も荒んできてるなー。

溜め息をついて、自分用にお鍋の中身をよそってから、ついでにお酒を注ぐ。

「来月はクリスマスですか~。早いものですねぇ」

乾杯の仕種で、お互いお猪口を空けた。

「吉岡は、まだ年上彼氏に言い寄っていないのか?」

「はい?」

それもまた……唐突ですね。白菜を噛み締めながら目を細める。

その様子にオーナーは勝手に納得した。

「……やっぱり、会えないと難しいか?」

そうですね~。

各店巡回してた時は頻繁にオーナーの姿を見ましたが、店を固定されると各店には週一でしか訪れない事を知りました。

「君の好きな人は、確か1号店の男だもんな」

いちごうてんの男?

「確か、カマクラの人間なんだよな?」

あ、そういえば、勘違いさせたまんまだったかも……。

「心配しなくても、ちゃんと協力するから」

微笑み付きのその言葉にムッとした。

解っていないとは、解っているけど……この知ったかぶりの笑顔がとってもイライラする!

だから、徳利を傾けながら出来るだけ低い声で呟く。

「もういいですよ!」

「いや。君は諦めちゃ駄目だろ」

驚いた様な彼の顔に、きっぱりと首を振った。

「私、諦めてなんていません!」

「そうなのか?」

「何もしないで後悔するくらいなら、ちゃんと告白した方がスッキリします!」

オーナーの笑顔が一瞬だけ陰った。

言ってはいけない事でしたか?

でも、言われて当然なんだからね!

「吉岡はたまに、かなり痛いとこを突くよな」

しみじみしたオーナーの様子に首を傾げる。
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