Love Cocktail
やっぱり……何かあったんですか?

「……今日のオーナー、変ですよ?」

そう言った瞬間、オーナーの表情が元の笑顔に戻った。

……取り繕うのは本当に得意ですよね。

「そんな事はない」

お魚を口に入れ、もぐもぐしながら首を振るオーナー。

「そんな事はありますから!」

「いいから。君も早く食べなさい。煮詰まるぞ」

そう言いながら、お鍋の鳥肉をポイポイ私の器に入れてくる。

でも……なんで、鶏肉が全部こちらに?

「オーナーって、鶏肉嫌いでしたっけ?」

「いいや」

視線が斜め下を向いて、明らかにはぐらかそうとした返事を返された。

「では、召し上がって下さいよぉ!」

器を移し替えようと膝立ちになった時、オーナーは慌てた様に手をかざす。

「煮た鶏の、皮が駄目なんだ!」

……煮た鳥皮?

「よく焼いたのなら平気なんだが、そのブツブツとぶよぶよな食感が苦手なんだ!」

確かに、煮たら鳥皮のブツブツは見えます。

よく焼けば、カリカリにもなりますが……。

そう。まぁ、こういうのは苦手な人は苦手ですからね~。

「煮たお肉は平気なんですか?」

「皮が駄目なんだ」

「解りました!」

丁寧に皮だけを剥いで、そのお肉をオーナーの器にポイポイ移し替える。

「それなら、召し上がる事が出来るでしょう?」

つるつるになった鶏肉に、オーナーはちらっと私を見上げた。

「……笑わないのか」

「誰でも得手不得手があるもんです! ちなみに私は魚の皮が大の苦手です」

「魚の皮?」

「あれだけは、煮ても焼いても苦手なんです! 出されたら綺麗に剥げるようになりましたねぇ」

にっこり笑うと、オーナーはちょっとだけはにかんだ。

その笑顔に心臓がストン……と、どこかに落っこちる様な感覚。

それから、急に心臓がドキドキし始めた。

可愛いって言うか。ラブリーって言うか。もう、とにかくナデナデしたいって言うか!

その素直な笑顔に弱いんですよね。

いつも笑顔なんですけど、いつも微笑みなんですが!

その笑顔は、とっても反則です!

「吉岡といると、やっぱり楽でいいな」

……え?

「楽……ですか?」
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