Love Cocktail
オーナーは頷いて、お酒の入ったお猪口を上げる。

倣ってお猪口を持つと一緒に飲み干す。

「ああ。吉岡といると、気を使わなくて済むし、楽でいい」

ふーん? 気を使わないですか。

「何か、家族と一緒にいるみたいで、和めるよ」

家族……ねぇ?

空のお猪口を眺めて苦笑した。

一緒にいて“楽”そして“気を使わない”ときて、しまいには一緒にいると“家族”みたいで、そして“和む”ですか。

それはつまり……ドキドキも全然しないって事ですよね?

いったい、どうすればいいんだろう?

何でも知っているような顔で、ホントに何にも気づいてない。

オーナーに気づいてもらうには、やっぱり面と向かって告白する……それしか方法はないんでしょうねぇ。

「オーナー……私、可愛くなりましたかぁ?」

オーナーは食べながら考えるように首を傾げ、そして飲み込むと頷いた。

「そうだなぁ。今みたいに怒った顔じゃなければ、可愛く見えるんじゃないか?」

怒らせているのは、主に貴方なんだけどね。

とにかく……。

「見えるだけですかぁ?」

「性格が小悪魔じゃな。頑固でひねくれてて、そして天然で?」

ニヤニヤ笑うオーナーに半眼になって睨み付ける。

それから、視界の隅に映った店員さんを呼んだ。

「すみません。二合の熱燗を三本追加で」

オーナーは目を丸くして、注文を受けて去っていく店員を見送った。

「吉岡?」

「勝負はまだまだ続きますよぉ!」

お酒を注ぐ私に、オーナーは苦笑した。

こんなこと、飲まずにやってられますか!

そして、今日も、勝負は私の圧勝に終わった。










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