Love Cocktail

Arcadia

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朝……と言っても昼。

カーテンから射す太陽と、鳴り響くスマートフォンの着信音に起こされた。

うわぁ……服のまま寝ちゃった。

オーナーを潰したとは言え、私もかなり飲んだから……。

じゃなくてスマホ。

かろうじて充電器に挿さっていたスマホを手にとって急いでスライドする。

「もしもし?」

『あんたはいつまで寝てるの!』

一喝をされてスマホを耳から離した。

いきなりのお説教ですがお母様。

「……珍しいね~。連絡なんてくれるの」

『あんたが、連絡寄越さないからでしょうが』

「まぁ、うん」

あくび混じりに答えて、ベッドから立ち上がる。

「で、どうかしたぁ? 母さんが用もないのに電話なんてしないでしょ」

あーもう。喉がカラカラ。

そう思ってキッチンに入り、冷蔵庫からお茶のペットボトルを出した。

『お兄ちゃんが、雪山で事故を起こしてね』

思わずペットボトルを取り落として、足にぶつける。

「痛っ! って、ええ?」

『幸い、足の骨折くらいで済んだけど……全治3ヵ月って言われてね』

あ、生きてた……そりゃそうだよね、さすがにどうにかなってたら、母さんだってこんな落ち着いているとは思えない。

「誰かにぶつけたか、ぶつかられた? それとも物損?」

車の事故を想定して聞いてみたら、否定が返ってきた。

『あの馬鹿、山まで行ってスノボだかスキーするだとか言って! 林に突っ込んだのよ』

それはそれは兄貴らしい……。

スキーはそこそこの腕前のはずだから、最近始めたばかりのスノボの方だろうな。

「自業自得だねぇ!」

『そりゃそうだ。まったく落ち着かないったら』

グチグチ言う母さんにペットボトルを拾いながら苦笑した。

「じゃ、店は父さん一人なのぉ?」

『そうなの! だから、あんた兄ちゃん帰って来るまで店を手伝えない?』

はぁ!? 簡単に言ってくれるけど、娘だって働いているんだよ?

じゃ、兄貴が治るまでお店休みますねって簡単に行くはずがないでしょう!?

「急に言われたって。無茶を言わないでよぉ!」

『だってあんた……どうせバイトなんでしょう?』

どうせ……って、バイトだからって無責任に放り出せるとでも思ってる訳!?

そりゃ実家のお店も大事かもしれないけど、私にだって大事なものはあるんだから!
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