Love Cocktail
「こういう時、女性同伴だと助かるな」

「何がですかぁ?」

オーナーは頷いて、ハンドルを握りながら人差し指を立てる。

「スーツ姿でも奇特な目で見られない」

「……そうでしょうね~」

「この間ドーナツを買いに行ったら、女子高生に笑われた」

「ご苦労様ですぅ」

その格好で買いに行ったとしても、お持ち帰りなら普通な気がしないでもないけど……。

「全種類って言うのは、まずかったかも知れないが」

おい。とツッコみそうになってやめた。

でも、ドーナツ屋さんのドーナツを全種類って……想像してみて吹きだす。

「それは男性だから、とか以前の問題じゃないですかぁ!?」

「仕方がないだろう。どれも旨そうだった」

そんな拗ねたように言われてもねー?

「だからって、普通は買いませんよ!」

「やっぱり……そう?」

「買ったとしても10個前後になさって下さい! お持ち帰りなら誰かのお土産風に見られますから」

オーナーは、少し悲しげに頷いた。

「次からはそうする」

これはいわゆるスイーツ男子かな? 

本当に甘い物がお好きなんですね。

「……オーナー。いい事教えて差し上げます。1号店の最寄りの駅の地下にあるsplashってお店のアップルパイはお勧めですよ!」

「へぇ?」

目を輝かせたオーナーに、にっこりと微笑んだ。

その後、甘味処でぜんざいを食べながら、思いつく限りお持ち帰り出来るスイーツ店を教えると、それをわざわざスマホのメモに入力して、ちょっとだけ満足げなオーナーに呆れる。

「本気でお好きなんですね~」

「いいじゃないか」

オーナーはスマホをしまうと、抹茶を飲んで顔を赤らめた。

「とりあえず、他の人間には秘密にしておいて欲しいが……」

「構いませんけど」

みたらし団子を食べつつ頷いた。

「吉岡も……甘いものが好きか?」
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