Love Cocktail
甘いものかぁ。

疲れていたら無性に食べたくなる時はあるけど。目を輝かせてまで好きとは言えないかも。

「たまに食べるくらいですね~」

「それにしては、かなりの店を知ってるな」

目を丸くされるから、にんまりと微笑み返した。

「実家の母が好きで。テレビを見ては、あれがいい、これがいいって電話がくるんですよ」

お茶を飲んで小首を傾げる。

「……インターネットがあれば、お取り寄せも出来るんでしょうが。なんせ機械音痴なので」

「あー……うちの母もそんな感じだね。未だに電卓と大学ノートで税調を管理してる」

税調!? 税金対策? そんなけったいなものを大学ノートで管理してるの?

不思議そうな顔をすると、オーナーは頷いて指を立てた。

「母はうちのグループの税理士だから。一応」

「あ、そうでした! オーナーってそういえば御曹子でしたものね!」

一応、有名グループの社長の息子ってことには変わりない。

頷いていたらとても呆れた目で見つめられる。

「……俺の所で働いていながら、忘れられる君は、ある意味スゴイよ」

だって、全然そんな感じがしないから。

でも、一条グループの税金を電卓と大学ノートで……って言うのも、かなりスゴイと思う。

大きな会社でも、家族間でお仕事なさっているんですね~。

うちの実家でも、母さんが青色申告とか、税理士の友達に聞きながらこなしているみたいだけど。

店を持つなら、その辺は押さえておかなきゃいけないかなー。って言っても、税金の事なんて全然わからないし。

大変だろうなぁ……母さんも、てんてこ舞いかも知れない……。

そう考えて、ちょっと申し訳無くなってきた。

「オーナー。突然なのですが」

オーナーはおかわりしたぜんざいから顔を上げる。

「来月中、お休みもらうことって出来ますか?」

彼は少し難しい顔をして、黙々とうわの空でぜんざいを食べ始める。

「……1月に入ってからなら。引き抜きで二人増えるからどうにかなるが、どうかしたのか?」

「いえ~。兄貴が事故ったらしくて。今、親父一人で店を切り盛りしてまして……」

「事故? かなりひどい状態なのか? お兄さんの容体は?」

とても心配そうな様子に、慌てて手を振った。

「3ヵ月くらい入院するらしいですけど。大丈夫とは言われてるんで」

「……すまない」

頭を下げるオーナーに目を丸くする。

「いえ! こちらこそ! 本当に大丈夫って言われてるし、私も無理だとは言ってありますんで!」
< 56 / 112 >

この作品をシェア

pagetop