Love Cocktail
オーナーは顔を上げ、今度は困った顔をした。

「でも……家族のことだし、心配だろう?」

やっぱりオーナーを困らせちゃったか。

こういうところ人が良いっていうか、優しいんだよね。

「でも、まるっきり兄貴のは自業自得ですから!」

きっぱりと首を振るとオーナーはそれでも納得していない顔をしている。

「遊びに行って勝手に怪我してるんですから。オーナーがすまなく感じる事はないです!」

どうせスノボもそんなに上達していないくせに、高い所まで行っちゃったんでしょ。

少しだけ苦笑すると、オーナーは微妙な表情を見せながらも眉を寄せた。

「とりあえず交渉はしてみるか。出来るだけ早めに来てもらえないか聞いてみるから。クリスマスさえ乗り切れば……」

「ああ。いえ。無理なのは最初から分かってますし、いいですから!」

ぶんぶんと手を振って困った顔をすると、オーナーは両手を上げて降参ポーズをした。

「解った。解ったから」

どうしようもない子だな、とでも言いたげに首を振り、微かに苦笑される。

オーナーはその後お店に顔を出しに行く……と言うので、マンションの前で車を降ろしてもらった。

「今日はご馳走になりました」

頭を下げると、彼は首を振って微笑んだ。

「こちらこそ。久しぶりに堂々と食べられたよ」

「ドーナツを買う時は制限10個にしてくださいねぇ!」

助手席を閉めようとドアに手をかけた時……。

「あ。吉岡!」

呼び止められて、手を止める。

「はい?」

「ちゃんと協力するから。君は頑張るんだぞ?」

何をでしょうか? キョトンとすると、真面目な顔をしてからマンションをちらっと見た。

「それから、君は郵便ポストを毎日見ているか?」

ポスト?

「え? いいえ」

「じゃあ、きちんと見ておきなさい」

よく解らないけど。

とりあえずオーナーの車を見送ってから、マンションの郵便受けを見に行く。

エッチな広告とか不動産のチラシしか入って来ないから、請求書の時期以外はポストは見ないんだよね。

でも一応、ポストの中身を取り出して部屋に帰った。

案の定、意味もないチラシの山。

近所のスーパーの3日前に終わった特売日。エッチビデオの安売り。

テレクラで働きませんか?の広告。

夢の光だとか宗教の勧誘案内。

その中に、四角い白い封筒を見つけた。
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