Love Cocktail
スマホと便箋にかかれた番号と、招待状の返信用葉書を眺め、それから時計を見る。

時刻は夕飯を用意をするような時間帯。

でも、今日は平日。

普通のお仕事の人は、就業してる時間なんだろうか?

ま、仕事中なら、留守電になるでしょう。

スマホに添付された連絡先を打ち込んでからコール音に耳を向ける。

5回目で早苗さんの綺麗な声が聞こえた。

「もしもし吉岡です!」

『……吉岡さん? あ。招待状を見てくれたのね?』

「はい~。で、悩んで電話してみましたぁ。今、お時間は大丈夫なんでしょうか?」

『大丈夫です。今はドレス選びに来ていて休憩中ですから』

ドレス選び中? いいですねー。

花嫁ドレスは憧れちゃいます。

「早いですね~」

『や。遅いみたいよ? 普通は半年以上前から選ぶらしい……』

少し楽しそうな早苗さんの声に微笑む。

「でも、ご結婚。いつ決まったんですか?」

『えー……』

言いにくそうな早苗さんに、クスクス笑う。

「もったいぶらずに、教えて下さいよぉ!」

電話口でちょっと笑うような気配が伝わってくる。

いやもう、本当に幸せそうですねー。
もじもじしてる様子が目に見えるようだな。

『隆幸さんの誕生日に』

「あ、やっぱりですか」

『やっぱり?』

不思議そうな声が聞こえてきたけれど、それには答えずに首を傾げる。

そんな気がしてました。

誕生日に桐生氏が家族に会せるって事前情報もあったし、そうかなーって思っていましたよ。

「でも、私がノコノコお邪魔してもいいものか……」

『問題がなければ是非来て下さい。手紙にも書いたけど、私この性格だから友人が少ない……』

それから言葉を切って、咳ばらいした。

『親戚も呼ぶつもりがないから……参列してくれるのは佳奈だけなんです』

ええ?

「ご親戚は呼ばないんですか?」

『はい。疎遠な人達なので呼ばないです』

どこかきっぱりした口調に、何かあると感じてそれ以上は聞かないことにした。

そっか、場所柄からして会社の同僚さんも少なそうですよね。

そうなると花嫁側の列席は悲しい感じになっちゃうのかな?

「じゃ、お邪魔させてもらっちゃいます!」

『ありがとうございます。それじゃ、この機会にお名前を呼んでもいい?』
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