Love Cocktail
その数が30店舗?

週に一度とは言え、これを回る訳でしょう?

一体いつ寝てるんだろう。

真面目もほどほどにしないと身体壊しちゃうんだから。

私なんかが心配しても、きっと笑われるだけ……なんだろうけど。

見栄っ張り……ではあるかな。

フェミニストで、ちょっとスケベ?

男の人は大概そうかもしれない。

店に来るお客様でも、渋めなダンディな方がいきなり口説いて来る、なんてよくある話で。

でもムッツリよりはいいかな? そんな事を考えてちょっと苦笑する。

何をするでも言うでもなくて、ただ黙って見つめてくるお客様もいるから、その場合は対処に困る。

ちょっと不気味だし。

そんな時は中根さんがこっそりカクテルのリキュールを濃いめにして追い返してくれる。

ぼんやりと、遠くに見えるテラスの窓から外を眺めた。

地下通路に貼られたポスターは冬一色。バーゲンのものや、宝石関係のものやらがたくさん。

クリスマスのプレゼントにいかがでしょう、って事なのかな?

こういう夜中心の仕事をしていると、イベント事は大忙しだからお休みなんてあり得ない。

仕事が終われば他の店も終わっているし、何年もクリスマスらしいパーティーなんてしてないかも。

通路に飾られたクリスマスリーフを見つめながら、我ながら寂しいヤツだなって感じた。

「吉岡さん?」

目の前で手を振られ、ハッと我に返る。

見上げると赤城さんの姿があった。

「あれ。赤城さん。お久しぶりです!」

「久しぶり」

爽やかな笑顔を振りまく赤城さんの手にはキャラメルマキアートが乗っていて、空いている席をちらっと見る。

「ちょっといいかな?」

まだ時間は問題ないし、断るのも変なので曖昧に頷くと、椅子を引く小さな音がして赤城さんは目の前に座った。

「えー……と。少しだけいきなりかなって思うんだけど」

忘れてかけてすっかり冷めてしまったのエスプレッソを飲み、どことなく困ったような表情の赤城さんを見る。

「何から聞いていいか、解らないけど」

「はい?」

なんだろ。とてもとても言い難そうにしている赤城さんに首を傾げた。

どうして困った様に赤くなってるんだろう?

「吉岡さんて、僕のことが好きなの?」

言われた言葉に唖然とする。

私が? 赤城さんを好き?

どういうことですか。どうしてそんな話になるんですか?

「ええ!? ど、どうしてですか?」
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