Love Cocktail
本格的に協力って……この事だったんですね!

確かに、ちゃんと訂正をしなかった私も悪い。

でも、そこまでの協力をオーナーに頼みましたでしょうか!?

いいえ。頼んでません。頼めるはずがありませんから。

御当人に向かって、告白するから御当人であるオーナーを呼び出して……なんて、協力を頼むはずもなく!

しかも、しかもですよ! あろうことか、まったくの勘違いだから!

なんて人だろう。他人様まで巻き込んで“好きだから行ってやって”とは、よく言えたもんですよ!

好きとか嫌いとかは、そんなことは本人が言うべき言葉でしょう!?

もう、なんて検討違いでお騒がせな……なんてことをしでかしてくれるんだっ!!

椅子が倒れるのも気にせずに、勢いよく立ち上がった。

「……吉岡さん。目が据わってるけど」

怯え顔の赤城さんをキッと睨み付け……。

「赤城さんに怒っている訳ではありません!」

きっぱりと否定してからコートを着る。

「オーナーは、今、1号店にいらっしゃるんですか?」

「う、うん。最近、店の方でゴタゴタがあって……詰めてる」

「そうですか! とにかく赤城さんにはとんだご迷惑を……」

頭を下げると、赤城さんは慌てて手を振ってくれた。

「僕はいいんだけど……その、あまり恐いことは……するんじゃないよ?」

「そんな事はしません! 事と次第によっては解り兼ねますが!」

バックを持つと、再度、彼に頭を下げてsplashを後にした。

とにかく、あの勘違いには怒髪天!

怒って髪が天に向かって立ち上がったら、それはそれで大変だけど。

それっくらいに怒ってるわけで。

親切なのは解ります。

オーナーはとっても……いえ、かなり親切なんでしょうとも。

いつまでも進展しなさそうな私に、自分自身と重ねるとかそういう事しちゃったのかも知れない。

でも……ですからこそ! やり過ぎだから!





***



カマクラ1号店に着いて、勢いよくドアを開けると従業員入口を入る。

マネージャー室を覗き、誰もいない事を確認して、それから休憩室を見て腕を組む。

誰もいない。

というか……人が誰もいない。

いくらなんでも、もう15時半になるのに?

違和感にドキドキしながらも厨房を覗く。

ここにもいない。

入口が開いていたから、誰もいないって事はないと思うんだけど。

厨房の品出しカウンターを回りフロアに出る。

「吉岡?」

低い声に振り返った。
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