Love Cocktail
「私、オーナーを好きなんです」
するするっと出てきた言葉を自然に唇に乗せる。
これで“私の”位置を決めるのは貴方だ。
しっかりと顔を上げて、少し戸惑ったような、そして驚いたようなオーナーを見つめる。
「……え?」
何度だって言えますよ?
「私は、貴方が好きなんです」
彼の見せる驚愕と困惑に微笑む。
それから、少しの後ろめたさに……内心で苦笑する。
オーナーは静かに視線を外し、自分の指先を見ていた。
しばらくの沈黙の後で口を開く。
「……ごめん。俺はそういう風には見ていない」
うん……。
それで立ち位置が決まった……決まったと思う。
「解りました!」
明るく言って、立ち上がる。
「そんな事は最初から知ってますよねぇ」
驚いたように顔を上げたオーナーにヒラヒラと手を振って、それから一仕事終えたように息をついた。
「ま、でも、これでスッキリしました!」
「吉岡……」
「私が勝手に好きで、勝手に告白したんです」
にっこりと微笑んで、小首を傾げて見せる。
お客様を楽しませ、楽しい気分のままにお見送り
。
それが私の、プロのバーテンダーとしての誇りでもあると思う。
これは基本中の基本だよね。
「だから、気にしないで下さい」
「だが……」
「だが……も何もないですよ。もしオーナーが気になさる様なら、私が居心地悪いですからぁ」
パンパンと手を叩いて、肩を竦めた。
「じゃ、私は用が済んだので帰りますね~」
くるりと振り返って、マネージャー室のドアノブに手をかけ……。
「吉岡」
呼び止められて、キョトンとした表情で、何げなく振り返った。
「はい?」
オーナーは座ったままで、じっと私の顔を眺め……だけど、やっぱりそっと視線を外していく。
「いや、その……本当にすまない」
「はいはい。十分ですよ!」
軽やかに手を振って、ドアを勢いよく開いた。
「では、お先に失礼します!」
マネージャー室を後にして、また勢いよく従業員入口を出る。
駅に向かう途中、道路を挟んだ向こう側に戻ってくる赤城さんの姿が見えた。
「…………」
彼が私に気付く事もなく、私から声をかけるでもなく、距離を空けてすれ違い、立ち止まった。
ちょっとだけ冷えた身体を抱きしめる。
冬の空はとても薄っすらと青くて、高く感じる。
高くて、遠くて、とても寒い……。
ぼんやりしていた時、バックの中で、携帯の音が鳴り響いた──……
するするっと出てきた言葉を自然に唇に乗せる。
これで“私の”位置を決めるのは貴方だ。
しっかりと顔を上げて、少し戸惑ったような、そして驚いたようなオーナーを見つめる。
「……え?」
何度だって言えますよ?
「私は、貴方が好きなんです」
彼の見せる驚愕と困惑に微笑む。
それから、少しの後ろめたさに……内心で苦笑する。
オーナーは静かに視線を外し、自分の指先を見ていた。
しばらくの沈黙の後で口を開く。
「……ごめん。俺はそういう風には見ていない」
うん……。
それで立ち位置が決まった……決まったと思う。
「解りました!」
明るく言って、立ち上がる。
「そんな事は最初から知ってますよねぇ」
驚いたように顔を上げたオーナーにヒラヒラと手を振って、それから一仕事終えたように息をついた。
「ま、でも、これでスッキリしました!」
「吉岡……」
「私が勝手に好きで、勝手に告白したんです」
にっこりと微笑んで、小首を傾げて見せる。
お客様を楽しませ、楽しい気分のままにお見送り
。
それが私の、プロのバーテンダーとしての誇りでもあると思う。
これは基本中の基本だよね。
「だから、気にしないで下さい」
「だが……」
「だが……も何もないですよ。もしオーナーが気になさる様なら、私が居心地悪いですからぁ」
パンパンと手を叩いて、肩を竦めた。
「じゃ、私は用が済んだので帰りますね~」
くるりと振り返って、マネージャー室のドアノブに手をかけ……。
「吉岡」
呼び止められて、キョトンとした表情で、何げなく振り返った。
「はい?」
オーナーは座ったままで、じっと私の顔を眺め……だけど、やっぱりそっと視線を外していく。
「いや、その……本当にすまない」
「はいはい。十分ですよ!」
軽やかに手を振って、ドアを勢いよく開いた。
「では、お先に失礼します!」
マネージャー室を後にして、また勢いよく従業員入口を出る。
駅に向かう途中、道路を挟んだ向こう側に戻ってくる赤城さんの姿が見えた。
「…………」
彼が私に気付く事もなく、私から声をかけるでもなく、距離を空けてすれ違い、立ち止まった。
ちょっとだけ冷えた身体を抱きしめる。
冬の空はとても薄っすらと青くて、高く感じる。
高くて、遠くて、とても寒い……。
ぼんやりしていた時、バックの中で、携帯の音が鳴り響いた──……