Love Cocktail
まぁ、いいかな。

思い出はたくさんある。

4年も住んでいれば、いろんなモノが多くなるものだ。

溜め息をついて、出勤の準備をする。

シャワーを浴びて、髪を乾かして……仕事の時はほとんど下ろしているけれど、今日は気分転換に上げてみた。

キッチリ結んで、頭の上でぐるぐる巻いてお団子にする。
お化粧をして、ローズ系のルージュを見た。

似合うと言われたピンクは捨てた。
白いシャツにジーパン。久しぶりに着たらぶかぶかしてた。

それからコートを着てからバックを取ると、中からヒラリと何かが落ちる。

『Pure Color』のロゴを見て眉をあげた。

早苗さんに貰ったきり、全然記憶から無くなっていたよ。

可愛く……は、もういいかな。だけど、イメージは変えたい。

スマホを取り出して、番号を押した。

コール音と同時に男の人の声。

『もしもし? あたしのプライベート番号を知ってるあなたはだぁれ?』

何故かお姉言葉に唖然として言葉を飲み込んだ。

『イタ電? 暇な人ね! 切るわよ!』

「あ~! 違いますぅ」

慌てて声を上げると、不思議そうな声が返ってくる。

『あらぁ、聞き覚えのない声ね。だぁれ?』

「吉岡苺といます!」

『イチゴ? 知らないわ』

そりゃそうでしょうとも。私も初めて連絡しますしね!

「はい! えーと、早苗さんに紹介されたんです。キュウちゃんさんは、いらっしゃいますか?」

『あたしだわ』

あなたですか!

『カット? パーマ? いつがいいのかしら?』

超特急に話が早くて笑ってしまう。

「25日は……ダメでしょうか」

『25は休みだけど』

「ああ……そうですか……」

がっかりかも……。

だけど、キュウちゃんさんは言葉を続けてくれる。

『なぁに? イヴならともかく、どうして25日?』

「あ、いえ。その日に実家に戻るので、この街を離れちゃうし……」

『……何時がいいの?』

溜め息交じりの言葉に瞬きをした。

「いいんですか?」

『気に入らなかったら、追い返すかもよ?』

「構いません。手伝って下さい!」

『何を?』

「天使像破壊です!」
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