Love Cocktail
バーテンダー組は始終そんな感じで。

いつもは、まったりなラウンジバーなんだけど……。時間を追う毎に、クリスマスのお祭りムードに飲まれていく。

「吉岡さん。ペアでジャグリングしようか?」

と言う浅間さんの誘いに、

「だから、フレアですってば。でもOKです!」

と、私が乗っかり。

気がつけば、ショーパブな雰囲気で幕を閉じた。





***



「クリスマスだし、たまにはいいんじゃないかな……」

マネージャーの苦笑いに、浅間さんと肩を竦めあう。

「オーナーから許可も出ていたし、浅間君が出来るようなら今後名物になるかも知れないし」

そう言いながら彼はファイルを閉じてにこやかに私を見た。

「なんせよ、吉岡さん。ヘルプメンバー時代から、長い間ありがとう」

頭を下げられて、慌てて手を振る。

「い、いえ! そんな!」

「いや、君のお陰で、中根君が真面目になった」

「……はい?」

真面目になった?

訝しい顔になる私を見て、マネージャーはニヤリと笑う。

「とにかくお疲れ様でした。後片付けよろしく」

言うだけ言って、片手を上げて帰って行くマネージャーに、私たちはただ首を傾げた。

「いったい何だったんでしょう?」

「さぁねぇ?」

中根さんが呟いてグラスを片付け始める。

「あ。すみません。手伝います」

時間も時間なので電車通勤組の庄司君と浅間さんを先に帰して、後片付けを手伝う。

キュッキュッと冷蔵庫カウンターを拭き、一段落した頃、目の前にビールの缶が置かれた。

「それくらいでいいよ、吉岡さん」

苦笑の中根さんに、ふきんを洗ってからターンテーブルに干した。

「一応ヘルプ含めて、ここいは1年お世話になりましたから。ちょっと念入りにお掃除させていただきました」

「1年か~。長いようで短いもんだね」

中根さんは、缶ビールを手にしてプルタブを上げると、プシュッ! という、ちょっと小気味よい音がBGMのない店内に響いた。

私も缶を手に取り、プルタブ開けて中根さんと乾杯する。

お互いにゴクゴクとビールを飲んで、その冷たさに目をぎゅっと瞑った。
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