Love Cocktail
「……寒っ!」

今まで、髪がマフラーがわりをしてくれてたんだね。

うなじ丸見えの今は、この街でも寒い! マフラー欲しいかも!

でも、マフラー買いに行ったらご飯どうしようかな。

ちょっと中途半端な時間……だけど札幌に帰るともっと寒いだろうし。空港で食べることにしちゃおうかな。

近場の百貨店までタクシーで向かい、ちょっと安めなマフラーを買う。
それから駅に向かって電車に乗り込んだ。

休日なのに人はまばら。
冬休みらしい、私服の若い子がたくさん。
その間に見える、窓の外をぼんやり眺める。

電車の窓から見える風景もこれで見納めなんだよね。
次に来たとしても、この街は目まぐるしく変わって行くから……きっと二度と同じ風景は見れないだろう、と思う。

外見だけは……どんどん変わって行くんだな、中身は少しづつしか変わって行かないのに。

「…………」

私ではオーナーは変えられなかった。

外見だけ変わっても、オーナーの心は変えられなかった。

見た目だけ変わっても意味がない。
中身はそのまんまで、全然変わってなんていないんだから……。

振り返って欲しかったな。
ちゃんと“私”を見て欲しかった。
今更、なんだけどね。

目的の駅で降りて、モノレールに乗り換える。
帰省する人が多いのか、今度は大きな荷物を持つ人が増えた。

そういえば4年間、私は一度も帰省してないかも。

それは親も心配するよ。

ちょっと苦笑しながら、溜め息をつく。

窓の外の空が、とても綺麗な青……空港に着いて、ゆっくりとモノレールを降りる。

一応、時間は1時間もあったので、お土産でも……とブラブラしていた時、早苗さんから着信が入った。

「もしもし!」

『苺ちゃん?』

……だから、苺ちゃんはやめて下さいって言ったのに。

「はいー。ストロベリーでございますよ~」

ちょっと吹きだしたような気配。

おお! ウケましたね!

「どうしたんですかぁ?」

『今、苺ちゃんが帰っちゃうって聞いて、びっくりして……』

そういえば、早苗さんに言ってなかったかもしれないなぁ。

「そうなんです! 兄貴が事故って、親父もギックリ腰やっちゃって! 実家がてんてこ舞いなんで!」

『……それだけ?』

私、今後は察しの良い年上の人、かなり苦手になるかも知れません。
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