Love Cocktail
だけど……。

「俺は、君が欲しいんだって!」

欲しい? それはどういう意味で?

男の人が女の人を“欲しい”って……この人は……!!

「まだ明るいうちから、何を叫んでるんですか!?」

投げた雪玉が、オーナーの顎にクリーンヒットした。

彼は、それはそれはもう、見事としか言いようがないくらい、ゆっくり綺麗に倒れていく。

ナイスコントロール私!

急いで立ち上がってコートの雪を払うと、また歩き始めた。

「……立ち止まらないと、また叫ぶぞ!」

それは、脅しですか? こんなとこでそんなこと叫んで、恥ずかしくないんですか。

溜め息をついて一応は立ち止まる。

「なんなんですか……」

ざくざくと足音が近づいて来て、後ろから肩に手を置かれた。

「そのままの意味だ」

「身体の関係なんて、私は別に望んでませんから」

「それは当たり前だな」

今、貴方はそう言ったでしょうが……?

違うなら意味を言ってよ、意味を。

困って俯くと、少し心配そうな声が聞こえる。

「父君とお兄さんは、復帰したのか?」

「とりあえず、兄貴は復帰しましたよ」

そう言うと、オーナーは私のうなじの髪に触れながら沈黙していた。

「用があるなら、さっさっとして下さいよ」

「そうだな」

なんだかもう、訳が解らない事だらけ。

「やっぱり髪、切ったんだな」

「見ての通りですけどぉ」

「うん……」

言われた瞬間に、うなじに暖かい息がかかり、何かが触れた。

「んにゃ!?」

うなじを慌てて隠して、振り返る。

振り返った先に、困ったようなオーナーの顔。

「やっと振り向いた……」

クイッとおでこを押されて、そのまま上を向き……。

「なに……!?」

するんですか……という言葉は、そのままオーナーの腕に引き寄せられて消えていった。
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