私の声、届きますか?

学校

「おはよう、霧ヶ峰さん。」

教室に入って席に座ると同時に黒井くんが挨拶をしてくれた。

「あ、おはよう……」

語尾が消えかけた挨拶をしてしまった……っていうか声を出してしまった。幸い黒井くん以外に聞いてる人はいなかったので一安心。

「もしかして朝から歌ってた?」

え……なんでわかったんだろ……でもまぁ、当たっているから頷く。

「そっか!ねぇ、もしよければ俺にも聞かせてもらえないかな?」

うーん、でもあんまり自信の無い曲だからなぁ……でもあの時助けてもらったし、お礼!という形で……
雪音は頷いた。

「ありがとう!じゃあ、イヤホン片方貸してもらうね。」

黒井くんは笑った。そして、イヤホンを片耳に入れる時に目を閉じた。たまに見てたけど、黒井くんはずっとにっこり笑顔でいる。私にとっては表情筋がつるような難易度だ。

「ん……これなんか柔らかい曲だね。なんか眠くなってきた……柔らかくて落ち着く、いい曲だね。ホントに霧ヶ峰さんの歌は透き通るような綺麗な声だ。」

ボンッ!と音がなりそうに私の顔は赤くなったと思う。でも、髪は下ろしているので下を向いたから黒井くん以外に見られてはいないだろう。黒井くんはにっこり笑った。
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