私の声、届きますか?
帰りは迎えはない。お金持ちの人は迎えがあるなどという想像があるだろうが私は親からは腫れ物、邪魔者扱いなのでないのだ。

「あれ?霧ヶ峰さん、帰りは1人?送っていくよ!」

黒井くんはまた私に話しかけてきてくれた。今までこんなことが無かったので驚いた。もう学校の外で周りには生徒がいないのでやっと喋れる。

「うん、ありがとう。」

しばらく黙って一緒に歩いていると家に着いた。時間が長く思えた。

「……ねぇ、霧ヶ峰さん。もし良かったらケーキバイキングっていうの行かない?」

「ケーキバイキング?……私と?」

「うん!霧ヶ峰さんと行きたいんだ。ダメかな?」

「……駄目ってわけでは無いけど……明日の土曜日ならあいてる。」

「そっか! 良かった!じゃあ、明日のお昼に行こうか!集合は……駅の猫の銅像でいい?」

「いいよ。11時くらいに行けばいい?」

「うん、11時ね。じゃあ、また明日!」

「あ、うん……」

黒井くんは約束するなり直ぐにかえって行ってしまった。でも、姉さん以外の人と出かけるのは初めてだ。

「ただいま……」

家の扉を開けて前を見ても誰もいない。当たり前だ。何を期待しても、何を望んでも私には何も無いのだから。

「ただいまー!」

いきなり後ろの扉が開いた。まさか閉めた瞬間にまた開くとは思っていなかった。

「お、おかえり……遅かったね。」

「あ、雪音!ただいま!そして、おかえり!ちょっと寄るところがあったから遅れちゃったの。気にしなくていいよ。あ!そうそう、動物がいっぱい出てくるDVDとか借りてきたから見てみよう!」

2人とも靴を脱ぎ、段差を上がった時に奥から女の人が出てきた。実は父と再婚した女、つまり琴音と雪音の義理の母親である。

「琴音さん。少しお話があるのですけどいいかしら?」

「…………はい、わかりました。雪音、私の部屋で待ってて。あと、荷物もお願いしていい?」

私は頷き、荷物を預かって姉さんの部屋に向かった。
< 13 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop