私の声、届きますか?
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「これ、やるよ。」
急に差し出されたのは駅近くにあるアイルというお店のケーキバイキングの割引券だった。
「はぁ?俺、そんなに甘い物好きに見える?」
正直俺は甘い物は気分が向いた時にしか食べないし、わざわざ時間を割いてまで行こうとは思わない。
「違う違う。気分が向いた時でいいから使えよ。友達でも誘ってみたらどうだ?」
こいつ、俺の従兄弟の白井 郁(しらい ゆう)とは昔からよく一緒にいた。だから俺の気持ちを親よりもわかってくれる。少し悩んで一応貰った。
「俺よりも郁の方が使った方がいいんじゃないか?確かこの前、惚れた人と友達になれたんだろ?」
「あー、うん。実はまだそこまでの仲じゃないから不安で言えないんだよ。情けないことにな。」
ハハハと笑いながら郁は言った。
「どんな人なのさ。」
好奇心で聞いてみた。
「ん?んー、その人はな、とても綺麗で優しくて妹思いなんだ。」
「外見だけってのもあるぞ?」
「いや、本当に妹思いだよ。家が少し妹さんの事を良く思ってないらしくて自分だけでも味方でいてやるって言ってたし、写真も2人で笑ってるのを見せてもらったよ。」
シスコンかもね、と少し遠い目をして言った。なんとなく郁がこんなんだから凄かったのだろうとわかった。郁は大体は何があっても他人を蔑んだり、貶したり、否定などしない。大袈裟に言えばいい人なのだ。
「ま、一応貰っとく。」
そう言った時に霧ヶ峰さんを誘おうと思った。