私の声、届きますか?
「「いただきます!」」

私たち2人はケーキを取り席に座った。私のお皿にはチョコ系のケーキがたくさんで、黒井くんは苺がまるまる1個乗ったショートケーキやモンブランなどを取ったみたいで綺麗に並んで乗っている。私はまずチョコレートケーキを食べた。

「んー!美味しい。この前食べたケーキより美味しい!」

「確かに美味しい。今度はあいつを連れてこよう。」

「あいつ?ケーキ好きな人いるの?」

「うん。というか、甘い物が好きなんだよね。普段は仏頂面てか真顔なくせに、甘い物食べてる時が一番嬉しそうに笑うんだよね。」

「かわいいね、その人。」

私はつい面白くて笑った。黒井くんも一緒になって笑った。

「そいつは俺の幼馴染みでさ、いつも一緒にいるんだ。学校でもずっと一緒だからすぐわかると思うよ。名前は白井優(しらい ゆう)って言うんだ。」

「そっか、いいなぁ。私、幼馴染みとかいなかったからずっと姉さんといたから少し羨ましいなぁ。」

「いやいや、俺は霧ヶ峰さんの方が羨ましいよ。俺はひとりっ子だから家では寂しいもんだよ。」

「じゃあ、同じ無い物ねだりだね!ふふふっ!」

2人で笑って楽しい休日が過ごせたと思う。私はすごく楽しかったし、初めて姉以外と出掛けることが嬉しかった。こうして時間が過ぎた。

「あ、もう時間だね。そろそろ出ようか。」

そう言って黒井くんは席を立った。私が食べ終わるのを待っていてくれたんだろう。2人の皿は綺麗に何ものっていない状態だ。レジ近くになり黒井くんが財布を出したので私も財布をだそうとした。

「あ、いいよ。今回は俺が誘ったんだし、後で割り勘するのも面倒でしょ?」

「え、でもそれじゃ黒井くんが……」

「今日ここに付き合ってくれたお礼と思ってくれればいいよ。元々割引券を貰ってたしね。」

……でも、そうだと黒井くんにお世話になり過ぎてしまう。そう思った私はオロオロしていたんだろう。

「そんな顔しなくてもいいよ、楽しかったしね。霧ヶ峰さんは他人に世話になるのが嫌い?」

「…………。私は……」

「あー、もしかして自分が迷惑かけてるって思ってる?それが嫌い?」

黒井くんはレジでお金を払いながら聞いてきた。全くもってその通りだ。私は他人の迷惑になるのが一番嫌いだ。

「俺は迷惑だなんて思ってないよ?すごく楽しかったし、霧ヶ峰さんが笑ってる貴重な時間も一緒に過ごせたしね。むしろ感謝の気持ちしかないよ。」

「黒井くん……ありがとう、なんかスッキリした。じゃあ今回はお言葉に甘えるね。」

お店を出た私たちはこの後予定も無いので帰ることにした。

「またね、霧ヶ峰さん。月曜日に学校で。」

別れる時に言ってくれた『またね』。それがどんなに嬉しかったことか、この気持ちは誰にもわからないだろう。今まで姉以外とは一緒にいなかったのだから。『また会える』という友達がすごく嬉しかった。

「うん!またね、黒井くん!」

この日は絶対に忘れない。初めて自分から友達と思うことができ、初めてまたね、と言われたとても楽しかった大切な日。
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