幻が視る固定未来
学校から家に戻り、オレは速攻で有希乃に学校での話をした。

「分からない。楽しいこと? ないと思う」

部屋に湯のみが二つ用意されていて、ゆっくりしながら有希乃は話を聞いている。

「いや、それはまぁオレも同じだ。楽しいことを共有したい人か……オレ達はまず楽しいと思えることを探さないといけないみたいだな」
「難しいと思う」
「そっか? オレと違って有希乃には読書っていう趣味があるだろ。オレなんて何もない」
「違う。本はそんなに好きじゃない」

はっきりと言い切る有希乃。ひょっとしてオレに趣味がなくて、自分に趣味があることを気遣ってくれたのだろうか。
いやいや、有希乃に限ってそんな可愛い返答なんてしない。はっきりと本当に好きじゃないんだろう。それに本人は『そんなに好きじゃない』って言ってる。なら嫌いでもないということ。

「だったらなんでいつも読んでるんだ?」
「お母さんが召使いはそれなりに暇だからって……」
「だから本でも読んでろって言われたのか」
「少し違う。本でも読んで勉強しながら暇を潰せばいいって言った」

まぁオレの言った通りか。
すごい母親だな。けど先のことを考えてのことだから、流石と有希乃の母親と言った所だ。
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