幻が視る固定未来
そういえば以前にデカイ辞典を見ていたこともあったよな。
――けどそれだと有希乃も同じで趣味がなくなるな……いや、そういえばまだあるな。

「有希乃、剣道は好きじゃないのか」
「……驚いた。それと同じことをお父さんに言われた」
「だろ? あれだけ強いと誰でもそう思う」
「けど、私の剣道はある種の才能だから好きでこうなったわけじゃない。それに今まで比べる相手はお父さんしかいなかったからつまらない」
「有希乃のお父さんはそんなに強かったのか。まぁ有希乃の父であるから当たり前のことだな」
「そんなことない。私はお父さんと互角」

あの有希乃と互角なだけでも十分強いと思うけどな。

「けど今は少し楽しいかもしれない」
「今? ってことはオレを苛めるのがそんなに楽しいのか」
「うん」

うわっ! 平然とした面で言いやがった。こうなれば絶対に有希乃よりも強くなってやる。一人の“人”として。

あぁそれだとまた趣味が見つからないな。音楽は嫌いじゃないけど、最初はただ集中力を増すようにっていう理由で聞いてただけだし。
なんか趣味はないだろうか?


仕方がない。今度の休みにでも有希乃と一緒に出かけて探してみるか。
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