幻が視る固定未来
「なぁ有希乃。オレ達はどこに向かってるんだ?」
「分からない」

バッティングセンターから出てすぐに疑問。さて次はどこに向かうか。

「お、あそこに地図があるな。次の目的地でも探すか」
「うん」
「……」

先に歩いていく有希乃。オレは足を止めていた。それはチラッと見えた有希乃の顔が仄かに笑っているように見えたから。

「どうしたの?」
「……いや、なんでもない」

けど、振り返った有希乃の顔はいつもの顔。見間違いなのかもしれないし、さっきまで本当に笑っていたのかもしれない。それは分からないけど、表情がどうこうよりも本当に有希乃が今を楽しんでくれたのならそれでいい。

表情に出なくたって感情は表せる。有希乃の場合、難しいけどオレには分かる。
今、有希乃が楽しんでいるということを。

――そして自分自身も楽しんでいるということを。
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